名作ゲームはSwitchやDSなどに復刻版が販売されることが多い。
今回のランキングは、名作かつ復刻版が制作されていない作品のみを集めた。
偏りを防ぐため各ゲーム機1~3種類を選定。
それぞれの時代の技術を考慮し、驚きなど当時の感性で評価。
さすがにドラクエとファイナルファンタジーはベタなので排除(移植も多いし)。
現在サービス継続中のアーカイブス系もできるだけ排除(ランキング一部に配信中アリ)。
10位 46億年物語 はるかなるエデンへ
発売年:1992年
開発元:アルマニック
発売元:ゲームプラン21(販売元はエニックス)
機種:スーパーファミコン
ジャンル:アクションRPG
地球誕生46億年の歴史、進化論を題材にした作品。
プレイヤーの分身となる生物を進化させて、女神ガイアのとともに理想郷「エデン」に行くことを目指す。
NECのパソコンPC-9801用タイトル『46億年物語 -THE 進化論-』の続編(リメイクという声もある)。
純粋なRPGだった前作とは打って変わって、本作では横スクロールアクションRPGにジャンル変更。一部BGMとイベントを流用してるのみで、まったく別の作品へと生まれ変わった。これを進化と呼ぶか退化と呼ぶかは好みの問題だが…
太陽は我が子たる9つの惑星の3番目ガイア(地球)に生命を宿した。その中から選ばれることになる一個体の生命が、ガイアのパートナーとしてふさわしいのか確かめるため、太陽は選ばれし生物に「弱肉強食の試練」を与える。
最初は古生代のオルドビス紀に誕生した魚の生命体からのスタート。
1章:魚類、2章:両生類と進化過程に合わせて物語が進行し、各章のワールドマップから任意でステージを選択して攻略していく。
本作の中枢となるシステム「進化」は、「EVO.P」(進化ポイント)を消費することで行える。
倒した敵から落ちる肉を食べるとHPの回復と一緒にEVO.Pを獲得。敵を倒して必要なポイントを集め、進化を繰り返して理想の生物へと強化させていく。
進化・退化できる部位の種類は、アゴ、ツノ、後頭部、首、胴体、手足、背ビレ、尾の8種類。
気に入った現在の形態を50個まで登録できるほか、登録した生物に時間限定で変異もできる(消費アイテムが必要)。
この「進化」だが、隠し扱いの「人類」になると進化・退化ができなくなるほか(面倒だが戻す方法はある)、鳥類など一部生物のバリエーションが少ないという不満点もある。
とはいえ、カスタマイズ性があって当時の技術・容量の制約ながら今の時代に遊んでも意外とハマる。
進化論に沿って正しい生物に進化させるのもよし、様々な部位を組み合わせてオリジナル生物にするという遊び方もできる(部位に設定されたステータスの関係上、攻略難易度が上がるが…)。
アクションはそれほど難しくなく、序盤からサクサクと進められる。
簡単すぎてアクションが苦手な人でも余裕でクリアできる……と言いたいところだが、実は終盤から難易度が跳ね上がる。
あまりの急激な難易度の落差に攻略できず投げ出した人も少なくない。
逆にアクションが得意な人からするとシステムが単調で簡単すぎるという声もある。
ちなみに終盤のステージは世界観がガラッと変わる。
とある何かが物語に絡むせいなのだが、これまで46億年物語という作品を楽しんできた人ほど、この展開には拍子抜けすることだろう。
9位 リップルアイランド
発売年:1988年
開発元:東海エンジニアリング
発売元:サンソフト
機種:ファミコン
ジャンル:アドベンチャー
かわいらしい絵柄とハートフルなストーリーが癒される、ほのぼの系ファンタジーアドベンチャー。
人と動物が共存する小さな島「リップルアイランド」を舞台に、一攫千金を夢見る少年カイルと、住む家を失った少女キャルの冒険物語を描いている。
人と動物が平和に暮らす自然豊かな島国リップルアイランドで起きた大事件。ドテーラ王のひとり娘ナサレル王女が皇帝ゲロゲールに略奪されたのである。ゲロゲールは北の海に城塞を築き、リップルアイランドを侵略し始める。これは闇の時の始まりを意味する由々しき事態。このままでは自然の調和は崩れ、破滅の一途をたどることになる。事態を重くみた国王は、「ゲロゲールを討伐した者には褒美として財宝を、王女を救出できた者には王女との結婚を許可をする」と島の住人におふれを出した。そのおふれは、島のはずれに暮らす少年の耳にも届く。旅支度を済ませた少年は、北の城塞を目指して出発するのだった。
王道のコマンド選択式アドベンチャー。「ミル」、「トル」など9種類のアイコンコマンドを使って物語を進める。
エリアは全部で5つ。フラグの条件を満たすとエリアのクリアとなり、次のエリアに移動できる仕組みだ(エリアの後戻り不可)。
攻略手順さえ分かればサクッと終わるボリュームだが、この時代ならではのノーヒント攻略なので難易度が異様に高い。
エンディングは全部で4種類あり、真のエンディング(ハッピーエンド)のみスタッフロールが流れる。
この真のエンディングの条件がかなり難しく、多くのプレイヤーを悩ませた。
この作品の良さは、何と言っても絵本のような世界観と心温まるストーリーだろう。
メーカー自ら「ほのぼの系」と銘打ってるだけあって、遊んでいてほっこりした気持ちになる。
キャラクターのタッチも愛らしくて好感触。
歴代ファミコン作品の中でもよく動くアニメーション演出が、キャラクターとストーリーを引き立ててくれている。
本作で特に魅力的なキャラだったのが、ゲロゲールに家を壊された少女キャルだ。
青色のショートヘアーの女の子で、ファミコン界隈のトップヒロイン候補の一人に数えられる。
カイルとの出会いをきっかけに一緒に旅することになる彼女の見せ場といえば、やはり真のエンディングだけは絶対外せない。
彼女の人気は、この真のエンディングでさらに高まったようなもの。
カイルとキャルの二人が織りなす感動のハッピーエンドの尊さに胸キュンすること間違いなしだ。どんなエンディングかは実際に自分の目で見てみて欲しい。
ファミコン屈指の名作アドベンチャーと呼べる作品だが、実は当時あまり売れなかった。
流通の少ない名作のため、今や定価以上の価格が付いたレアソフト扱いになっていることが多い。
ちなみにプレイステーション専用タイトル『メモリアル☆シリーズ サンソフト Vol.4』にリップルアイランドが収録されており、プレステ3のゲームアーカイブス経由で遊ぶことができる。
8位 クロス探偵物語
発売年:1999年
開発元:ワークジャム
発売元:ワークジャム
機種:プレイステーション
ジャンル:アドベンチャー
探偵の黒須剣を操作し、様々な事件の謎を紐解いて解決に導いていく本格推理アドベンチャー。
セガサターンで発売された『クロス探偵物語〜もつれた7つのラビリンス〜』に追加要素を加えた移植版で、全部で7つのシナリオが楽しめる。
主人公の黒須剣(CV:草尾毅)は、冴木探偵事務所に勤める(ことになる)18歳の青年。推理力、洞察力に優れ、一度でも見聞きしたものは意識さえすれば絶対に忘れない、探偵としてズバ抜けた才能を持つ。
幼い頃に母親を、小学生の頃に刑事の父親を交通事故で亡くしている。親戚に引き取られる予定だったが、親戚みな父親にかけられた2億円という保険金に目がくらんでいたため親戚の親権になることを拒む。いつも仕事で忙しがった父親の代わりに面倒を見てくれていたアパートの大家のご好意に甘えて、これまで通り同じ部屋で一人暮らししてきた。高校卒業後、父の墓参り中に出会ったジャーナリストの女性から、父親の死因が交通事故に見せかけた他殺の疑いがあると示唆される。
オーソドックスなコマンド選択式。
「話す」、「調べる」などのコマンド、気になる場所をクリックする「ポインタ」をうまく活用して、各シナリオの事件の犯人を推理していく。
地名や犯人の名前など捜査や推理時に直接文字を入力する場面が多々ある。
難易度が高いほうだが、入力を間違えてもゲームオーバーにならないうえ、何度も推理ミスするとヒントまで教えてもらえる。初心者に優しいゲームシステムで思ったほど難しさは感じない。推理系が苦手で敬遠してた人でも十分クリアできることだろう。
シナリオ1は、探偵になることを決意した主人公が、名探偵として名高い冴木達彦に弟子入りするために冴木探偵事務所を訪ねるところから始まる。このシナリオ1のクリアに要する時間は約2時間。そのほかのシナリオも短くて1時間、長くて10時間ほどで終わるボリュームになっている。
7本あるシナリオの中で特異なのが4と6である。
シナリオ4は選択肢のない普通のノベル形式。儚い感動の物語となっており、付属のドラマCD(廉価版はナシ)でも同じストーリーを聴くことができる。
シナリオ6はダンジョン探索型の3Dアクション。
制限時間内にビルの最上階(15階)に行って荷物を取ってくるのが目的なのだが、普通のビルのはずなのに迷路のような構造になっていて果てしなく面倒くさい。
時間オーバーでアウトと、唯一7つの中でゲームオーバーが存在するシナリオである(3Dアクションが苦手な人はキツイかも)。
同時期のゲームと比べるとUIやシステムに少し古臭さを感じるが、本格推理がウリだけあってシナリオはどれも良質で面白い。また、コマンド入力のレスポンスの豊富さ、アニメーションのクオリティも素晴らしいのだが、特に評価したいのが読み込み時間である。
当時のCD-ROM媒体の欠点であったローディングに要する時間を「マッハシーク」という独自開発の高速読み込み技術で改善。当時トップクラスの読み込み速度を誇り、ロードによる待ち時間は殆ど感じさせなかったのだ。
推理モノ好きなら十分楽しめる作品なのだが、死体シーンや殺害方法などショッキングで生々しい演出が多い点には注意。
また、本作一番の問題点が、シナリオの伏線が回収されず、ストーリーの本筋が未完で終わっていることだろう。
実は続編の『クロス探偵物語2』で、8話、9話と続く予定だったが、商業的な失敗からか続編が世に出ることはなかった。
そのためゲームクリア後に消化不良で少しモヤる可能性がある。
ちなみに本作のDISK1、DISK2を『クロス探偵物語 前編(DISK1)』、『クロス探偵物語 後編(DISK2)』で別売り販売にした廉価版の「後編」で、『クロス探偵物語2』の予告ムービーを見ることができる。
7位 バトルマニア大吟醸
発売年:1993年
開発元:スタジオ宇宙鉄人
発売元:ビック東海
機種:メガドライブ
ジャンル:シューティング
バカゲーとして好評を博したスクロールシューティング『バトルマニア』の続編。
前作から僅か3日後を舞台に、超A級火力のトラブルシューター大鳥居マニア、その相棒の羽田マリア(オプション)が悪党相手に再び銃器をぶっ放す。
犯罪結社「アナグラン商会」の会頭ドン・モルグスティンを倒し、さらわれたアセンプリ公国の皇太子を救出したトラブルシューターの大鳥居マニアと羽田マリア。依頼を終えた2人が自宅で祝杯をあげていると、死んだはずのドン・モルグスティンが姿をあらわす。「平成バビロン(都庁)で待つ」と言い残して去ったモルグスティンの誘いに乗って、大鳥居マニアは寝ていた相棒を置いて平成バビロンに単身で乗り込むが……。
主人公は「マニやん」ことトラブルシューター大鳥居マニア。大雑把な性格と怒涛の攻撃で、10人に1人という「超A級」のお墨付きを協会にもらった18歳の金髪少女だ。
そして、マニやんの相棒を務めるのが同い年のトラブルシューター羽田マリア。武芸百般、頭脳明晰、金持ちの三拍子が揃った才女で、がさつで脳筋なマニやんの手綱をとって仕切っている。ゲームではオプション兵器としてマニやんをサポートし、前方or後方に弾を撃って敵を駆逐する。ちなみに二人の名字だが、当時セガの本社があった大田区羽田と最寄りの大鳥居駅から取られている(現在の本社所在地は品川区)。
マニやんの脳を狙う新たな敵の存在。
本作の目的は全部で9つあるステージを攻略し、アナグラン商会コングロマリットの一部たる教団「鬼哭教」(きこくきょう)の教祖キコクサイを倒すこと。
メインウェポンのショットはパワーアップアイテムで5段階まで強化可能。サブウェポンの特殊兵器は、全体攻撃や振り下ろしなど範囲の異なる武器が全4種類あり、各ステージの最初に好きなの1つ選ぶことができる。ゲージ満タン中に1回だけ使用可能な奥の手で、発射するとゲージが0になり、時間経過とともにチャージされていく。
寝て…訳あってステージ2からの参戦となるマリア。
任意(ボタン)で前方・後方に方向転換し、マニやんと一緒に攻撃したり、バックに出現した敵を対処できるのが強みだ。
また、「プローブ」というマリアとは別枠オプションの小型支援兵器もあり、こちらも同じく弾を撃ってマニやんを援護してくれる。
前作にはない本作からの機能として、マニやんのショット方向とプローブのフォーメーション(位置)をオプション画面の設定で変更できるようになった。
選べるショット方向は、従来の前方固定「1WAY」、マリア同様後方にも方向転換できる「2WAY」、8方向に方向転換できる「8WAY」の3種類。8WAYは便利だけど操作の難しい上級者向けのモード。何だかんだ初期設定が一番使いやすい。
操作に慣れてきたり、一度クリアしてから変更すると新鮮な気持ちでプレイできて楽しい。ちなみにマリアの存在価値が薄れるが気にするな。
敵や背景、ステージ幕間のデモなどネタに走った演出のせいでバカゲー扱いにされがちの本作。しかし、ゲームとしての完成度は、同時期の大作に引けを取らないほど凄い。特に当時最高峰のプログラミング技術を惜しげもなく投入した疾走感あふれる演出は圧巻の一言。開発者(デザイナー)も「技術の無駄遣い」と称するほどである。
自費で取材し、背景へと落とし込まれた湘南モノレールの再現度も素晴らしい(タコみたいな中ボスに破壊されるが…)。
こちらもある意味技術の無駄遣いと呼べるだろう。また、ステージのBGMも好評で、ゲームを盛り上げてくれる良曲が多い。個人的にはステージ5~8のBGMが神がかっていて気に入っている。
当時を知る世代すら馴染みのない人が多いであろう怪しさ満点のゲーム会社(開発チーム?)「スタジオ宇宙鉄人」だが、その技術力は一級品。メガドライブのサードパーティの中でも同じ技術力を有していた会社は数社しかない。グラフィック担当が「カプチィノ きたむら いがいたい」など、スタッフロールに流れるスタッフ全員の名前が酷いが(いい意味で)、その腕は確かだと作品で証明している。
ちなみに本作のスタッフロールの中で一番酷いと思ったのは、「マニやんのこえ こもりようこちゃん なめなめしちゃう」だ。
彼女が声優なのか、それとも開発スタッフなのかは分からないが、女性をなめなめしちゃダメだろ……(それとも、ようこちゃん自身がなめなめしてるということなのか?)。
まぁでもスタッフロールにも遊び心があって、悔しいが真面目に流すよりも楽しいのは確かである。ただ、お好み焼き「ちえ」、焼肉「 しんらく」などスタッフが通ってた飲食店や、セガ愛の詰まった同人誌「The MEGA Dictionary」もスペシャルサンクスとして載せて混沌を極めているが……。
6位 スウィートホーム
発売年:1989年
開発元:CAPCOM(第二企画制作課)
発売元:CAPCOM
機種:ファミコン
ジャンル:RPG
89年公開の同名映画を原作としたホラーRPG。
悪霊が巣食う廃墟の館に閉じ込められたテレビ取材班の脱出劇を描いている。
黒沢清監督のホラー映画『スイートホーム』をテレビゲーム用に再構築した作品。それに伴いシナリオも大幅に改編されている。
当時としては珍しい独創的なシステムと演出を取り入れ、ゲームの新たな可能性を引き出した名作。
ホラー特有の恐怖や緊張感をファミコンで上手く表現し、低スペックのハードでありながら今遊んでも意外と面白い。
プロデューサーの星野和夫、ディレクターの早川秋子、カメラマンの田口亮、レポーターのアスカ、一緒について来た和夫の娘エミによる5人のテレビ取材班は、フレスコ画家の間宮一郎が生前の頃に住んでいた館「間宮邸」を訪れる。山中に建てられた今はもう誰も住んでいない、いわくつきの館だ。取材の目的は、一郎が遺した未公開のフレスコをカメラに収めることである。さっそく撮影を開始していると、忽然と大きく揺れて玄関が土砂で埋め尽くされてしまう。
大切な館を荒らされ、怒りをあらわにする間宮夫人の霊。5人は別の脱出経路を探すため館内の奥へと足を運ぶのだった。
単独、2人編成、3人編成を組んで、2パーティ以上で切り替えながら館の探索を行う。
アイテムの持てる数は一人につき2個までと少なく、不要な物を床に置くなど整理する必要がある。
また、和夫の「ライター」、田口の「カメラ」、アスカの「掃除機」など、フリー枠とは別に各キャラ専用の固有アイテムもある(ゲーム開始時から所持)。
どの組み合わせのパーティで、どこに行って仕掛けを解くのか?が効率よく攻略するうえで重要となる。
幽霊などがさまよう無人の館が舞台の本作。当然ながらRPGの定番である宿屋などのお店は存在しない。HPの回復方法はアイテムの「くすりびん」のみ。しかも、入手できる個数が限られてるので、気軽にHP回復することもできない。
本作は死んだら二度と復活できない仕様のため、HPに気を配った慎重なプレイが求められる。ちなみに状態異常だけなら秋子の「くすりばこ」で無制限に治療できる。厄介な状態異常を気にせず探索できるのが強みだ。
ゾンビや幽霊、コウモリなど様々な悪霊・クリチャーが襲いかかる。
もちろんその殆どが映画に登場しないゲームだけのオリジナルだ(ドラマや映画のゲーム化お約束の改編ではあるが…)。武器の種類で霊系と生物系との相性が異なるほか、ライターなどのアイテムが有効な敵も存在する。
戦闘はシンプルなコマンド選択式バトル。本作に魔法の類が存在しない代わりに、5人には「心の力」という切り札が使用できる。映画にも登場した特殊能力のことで(映画では一部の人物のみ使用)、「こころのちから」(MP的なもの)を消費して敵に大ダメージを与えたり、戦闘中に捕まった味方を助ける効果がある。また、イベント進行にも必要など用途は様々。レベルアップと共に最大値が増加され、回復方法は「くすりびん」と、とある場所で入手できる隠しアイテムのみとなっている。
落とし穴、ダメージ床、水流、シャンデリアの落下(ポルターガイスト)など館内に仕掛けられた罠も豊富。HPの減少、仲間とはぐれる、中には死に直結するなんてものまである。「ライター=マッチ」のように固有アイテムの代替品があるので、仲間が死んでもゲームのクリアは可能。生き残った人数に応じてエンディングが変化する(2人と3人は同じ内容)。
ただし、人数が減れば減るほど、戦闘への影響やアイテム欄の圧迫で攻略が厳しくなっていく。ちなみに詰むことが多い作品なので、最初からやり直せる「ぎぶあっぷ」コマンドが用意されている。
クソゲーを除いた歴代ファミコン作品の中ではかなり難しい部類だが、ちゃんと思索して進めればクリアできる絶妙なゲームバランスとなっており、別に無理ゲーというわけではない。謎解きも恐怖演出も素晴らしいが、仲間が死んだら復活できないこのハラハラドキドキ感が本当にたまらない。RPGにしてはストーリー性が少し弱いが、当時の技術でこのゲームデザインに至ったスタッフの手腕は流石というべきだろう。ぜひともニンテンドークラシックミニに収録してほしかったのだが、実はこれまで移植やリメイクされたことがない。原作映画の権利絡みが理由とされており、今後も移植などの可能性が絶望的。この件に関しては本当に残念で仕方ない。
アーカイブス配信すらNGのスウィートホームだが、本作の独創的なゲームデザインを受け継いだ大人気シリーズがのちに誕生する。そう、それはCAPCOMのサバイバルホラー『バイオハザード』のことである。スウィートホームを土台にバイオハザードが開発されたのは、あまりにも有名な話。
本作の一部スタッフも開発に携わっており、スウィートホームの持つ独特の雰囲気や恐怖感、ゲームシステムを3Dアクションアドベンチャーへと反映させた。そして、「サバイバルホラー」という新たなジャンルを確立し、世界的大ヒットとなったのである。
このスウィートホームが開発されていなければ、バイオハザードが誕生していなかったかもしれない。いや、サバイバルホラーというジャンル自体どうなってたことやら(海外のメーカー辺りが開発してそうだが…)。
ところでスタッフといえば、本作『スウィートホーム』のプロデューサーを務めたのは、あの伊丹十三氏。97年に亡くなってるため若い世代は知らないだろうが、映画監督、俳優、エッセイスト、雑誌編集者など様々な肩書きで活躍した著名人である。映画『スウィートホーム』では、重要な役どころの山村健一役で出演していた。
5位 ダブルキャスト
発売年:1998年
開発元:シュガーアンドロケッツ、Production I.G(企画、原案、アニメーション制作)
発売元:ソニー・コンピュータエンタテインメント
機種:プレイステーション
ジャンル:アドベンチャー
フルアニメーション+フルボイスで展開するアドベンチャー作品「やるドラ」シリーズの第1弾。
街中で偶然であった記憶喪失の少女との奇妙な同居生活を描く。
やるドラシリーズのキャッチコピー「みるドラマから、やるドラマへ」。このシリーズの魅力だが、本筋となるストーリーから分岐先のエンディングまで、全編フルアニメーションで展開することだろう。キャッチである「やるドラマへ」の通り、アニメやドラマの視聴に近い感覚で、自分の選んだ選択肢に沿って物語が進んでいく。
プレイステーションで発売されたシリーズは全部で4作品。恋愛やサスペンスなど各作品でジャンルが異なるのだが、「主人公は大学生」、「ヒロインは記憶喪失」という4作品共通の設定がある。また、各作品には「四季」がテーマとして設けられている。
本作『ダブルキャスト』は、「夏」をテーマにした「サイコスリラー」作品。キャラクターデザインに「機動戦艦ナデシコ」の後藤圭二が担当しているほか、当時はまだ知名度の低かった梶浦由記がサウンド制作の一人として参加している。
主人公は映像研究部の新人カメラマン(ボイス、容姿はナシ)。
映研の飲み会で酔いつぶれてゴミ捨て場で寝ていたところを一人の少女に介抱される。
少女の名は赤坂 美月(CV:平松晶子)。彼女は自分の名前以外のすべての記憶を失っていた。美月の境遇を知った主人公は、居候させてもらっている叔父の家(夫婦で海外旅行中)に来ないかと誘った。すると美月は二つ返事で誘いを受け入れ、記憶喪失の美少女との夢の同居生活がスタートする……。
当時衝撃だったフルアニメーションで進む物語。後藤氏のキャラクターデザインとマッチし、同年代の作品の中でもトップクラスのクオリティを誇っていた。ラブコメ調から急展開するシナリオも秀逸で、ルート分岐先のバッドエンドも豊富。
しょうもないのから戦慄が走るものまで様々あって満足度が高い。
ただ、面白いのは間違いないのだが、周回プレイに不親切なゲーム設計で遊びづらい。とにかくシナリオ達成率をコンプリートするのが想像以上に大変。何度も周回が必要なゲームなのに、使いにくいチャプター&スキップ機能(早送り)などシステム周りが不便過ぎて途中でダレてくるのだ。正直言って、シナリオ達成率どころかエンディングのコンプですらツラい。シナリオと演出が良い作品だけに、もう少しシステム周りの開発に力を注いでいたら、より良い作品になったことだろう。
また、評価の高いシナリオと演出だが、バッドエンドにキツめの惨殺シーンがあって、耐性のない人にはオススメできない。当時雑誌など事前に情報を調べず、キャラデザの印象だけで購入したユーザーは間違いなく面を食らったことだろう。パッケージやゲーム開始時に、暴力・グロテスク表現ありの警告があったとは言え、あの衝撃のシーンは多くのプレイヤーにトラウマを植え付けさせた、ネタとして絶対ハズせない語り草なのだから……。
4位 風の伝説ザナドゥ
発売年:1994年
開発元:日本ファルコム
発売元:NEC-HE
機種:PCエンジンSUPER CD-ROM2
ジャンル:アクションRPG
日本ファルコムが手掛ける大人気作品「ドラゴンスレイヤーシリーズ」の8作目にて最終作。
悪しき邪竜が英雄に倒されてから1000年後の世界を舞台に、英雄の子孫である少年と復活した邪竜との戦いを描いている。
パソコンゲームで数々のヒット作を生んだ日本ファルコム。これまで自社ソフトの家庭用ゲーム機への移植はライセンス契約を結んだ別会社が行っていたが、今回初めて家庭用ゲーム機向け自社で開発した記念すべき作品だ。また、ファルコム黄金期を支えた天才プログラマー木屋善夫が携わった最後のシリーズでもある。
暗黒の世界から飛来し、美しい大地を破壊尽くした邪竜ダルダンティス。人々が絶望に打ちひしがれる中、ひとりの青年によって終止符が打たれる。邪竜を倒した青年の名はアイネアス。再び訪れた平和に人々は歓喜し、世界を救った英雄を王として迎えた。それから1000年の時が流れ、アイネアスの偉業は伝説の中へと埋もれていった。
主人公は、邪竜を倒した英雄の末裔アリオス・アレクトル(CV:山口勝平)。素性を隠して王軍に入隊し、最年少で百騎長まで上り詰めた実力者。しかし、辺境の地で魔物討伐隊長として参加するも、敵の罠で部下が犠牲になって敗走を余儀なくされる。そんな窮地の中、アリオスは謎の男の手によって気絶させられ、船で連れ去られてしまう。
全12章構成。トップビュータイプの通常フィールドを探索し、情報収集とイベントをこなしていく。フィールドマップは各章ごとの個別扱いとなっていて、過去の章で訪れたフィールドマップは二度と行くことはできない。各章のラストに待ち受けるボスを倒すとステージクリアとなり、次の章へと進むことができる。
本作の戦闘はトップビューとサイドビューの2種類。通常フィールドでは、上から見下ろしたトップビュータイプの戦闘になる。敵との戦いはシンプルで、自キャラを敵の正面に体当りするだけ。自キャラの装備と熟練度、敵のパラメーターで互いのダメージ判定が決まる。また、NPC(仲間)がいる場合、勝手に周りの敵と戦ったり、ジェム(お金)やハート(HP回復)を拾ってきてくれる。
ボスが巣食うダンジョン(トップビュー)を奥の特定地点まで進むと、画面がサイドビューに変化。
ザコ敵を蹴散らしながら進めていき、最後に登場するボスと戦う。横スクロールアクションのようなもので、「ジャンプ」、「スライディング」、「防御」、「タメ斬り」など動作も豊富にある。また、ザコ敵を倒すと落ちる「鈴」を取ることで、ボス戦ステージにNPCをひとり助っ人で呼び出すことができる。
このアクションパートだが、苦手な人の救済処置として、アクションパート専用のダメージ軽減システムが用意されている。敵から受けた攻撃を蓄積し、それに応じて徐々に被ダメージが減少していくというもの。回復に専念して根気よく挑戦していれば、アクションがヘタでもいずれクリアできる仕様となっている。
本作はとにかく戦闘を繰り返すことで成長していく。敵と戦うことで武器と防具の熟練度が上がって性能が引き出される。また、キャラクターが受けたダメージの回数によって、HPを回復したときに最大HPが増加する。各章の主な流れは、新たな町で武器防具を購入して、フィールドで敵と戦って熟練度(最大100%)を上げてからボス戦に挑むのが基本となる。
まさに王道ファンタジーと呼べる熱いストーリー展開で、各キャラクターの立て方も上手い(一部掘り下げの少ないのもいるが…)。3章開始時に流れるオープニング&ダルダンティス復活シーンなど、各章で流れるビジュアルシーンによる演出も素晴らしく、さすがパソコンでヒット作の実績のある日本ファルコムが放った渾身の一作である。
面白いのは確かだが、トップビューの戦闘が単調なだけに各章の熟練度上げ作業が飽きてくる。ストーリーやイベントのフラグが分かりにくいうえ、限定のサブイベントがあるのに各章の村や町に戻ることができないなどの不満点もある。
全滅してもお金やアイテムを失わないなど(幽体化を教会で復活させるだけ)、ライトユーザーに優しい仕様だけに、遊びにくいゲームデザインなのは残念なところだろう。
『風の伝説ザナドゥ』がヒットしたことで、1995年に正統な続編である『風の伝説ザナドゥⅡ』が発売。前作から3年後を舞台にしたストーリーで、より洗練されたPCエンジン最高峰の完成度に、前作同様シリーズのファンから好評を博している。
ところで、この「ドラゴンスレイヤーシリーズ」だが、プログラマーの木屋善夫が携わった作品のことを指す。木屋氏は『風の伝説ザナドゥ』が発売する少し前に日本ファルコムを退社しており、『風の伝説ザナドゥⅡ』の開発にはいっさい携わっていない。これが、続編があるのに『風の伝説ザナドゥ』がシリーズ最終作と言われている理由なのである。
ちなみにドラゴンスレイヤーシリーズの2作目のタイトル、実はこれも『ザナドゥ』。同じザナドゥなのだが、2作目と8作目はストーリーの繋がりがない独立した扱い。サウンドと一部システムを踏襲しているだけで、ちょっとややこしい。
3位 テイルズオブエターニア
発売年:2000年
開発元:日本テレネット、ナムコ
発売元:ナムコ
機種:プレイステーション
ジャンル:RPG
ナムコの大人気RPGテイルズシリーズの第3弾。
二つの隔絶された世界を舞台に、はるか昔から続く世界の因果に巻き込まれることになる少年少女たちの物語を描く。
固有ジャンル名は「永遠と絆のRPG」、キャッチコピーは「変われる強さ、変わらぬ想い」。キャラクターデザインは、いのまたむつみが担当している。
2000年も交流が途絶えた文明や風土の異なる隔絶された二つの世界「インフェリア」と「セレスティア」が向かい合うように存在していた。
インフェリアの片田舎の村に暮らす少年リッド・ハーシェル(CV:石田彰)、幼なじみの少女ファラ・エルステッド(CV:皆口裕子)の二人は、空から謎の飛来物が降ってきたことに気づく。
空に映るもう一つの世界セレスティアの異変。インフェリアでは、セレスティアから降ってきたものは災いが起こるとされていた。
落下地点の森で、異界の身なりと謎の言語を話す少女を保護した二人。災の少女を村から追い出すよう指示した村長に背いて、困ってる少女を助けるため一緒に村を出ていく道を選ぶ。
テイルズシリーズの魅力といえば、ストーリーとアクション性の強い戦闘システムだろう。
移動と攻撃の動作がリアルタイムに行われ、方向キーに割りふてた必殺技で敵と戦う。この頃のテイルズは戦闘画面がサイドビュー表示、簡易操作の2D対戦格闘のようなバトルが味わえる。
シリーズを重ねるごとに進化する戦闘システムだが、本作で一番注目したいのは、術(呪文)の使用時に発生していた画面の硬直がなくなったことだ。これまでの作品では、中級以上の術を使用したとき敵味方すべての動作を一度中断してから術が発動する仕様だった。本作から召喚を除くすべての術の演出がノンストップで発動するようになり、より一層アクション性が増したアクティブなバトルが展開されるようになった(キャラクターのスプライトが改善され、移動速度と攻撃速度が大幅に向上した影響も大きい)。
当時は隠し要素扱いで、それ以降シリーズの定番となる最強技「秘奥義」(秘奥義の原型は『テイルズオブファンタジア』の頃にあった)。それぞれの術士が持つ二つの入れ物に大晶霊(精霊)を入れて干渉させることで、キール(CV:保志総一朗)とメルディ(CV:南央美)の使用できる術が変化する、本作専用の術システム「クレーメル・ケイジ」など戦闘に変化をもたらす新たな試みが盛りだくさん。グラフィック、演出も大幅に向上し、まさに初代プレステ時代の最後を飾るにふさわしい集大成となった。
バグ、音量の調整不備、主人公&仲間のオート操作(AI)がゴミ思考など不満点も多い。だが、それらを踏まえても高い完成度を誇る人気作であり、本作以降の作品を含めた歴代シリーズの人気ランキング上位に選ばれるなど多くのファンから愛されている。
特に秀逸だと感じるのがストーリーと主要キャラクターの見せ方で、その面白さにグイグイと引き込まれる。それだけにサブキャラクターの扱いが少し雑で不憫に感じるのは残念なところだ。
初代プレステ時代のグラフィックとシステムという旧世代のハンデがありながら歴代最高傑作の呼び声もあるエターニアだが、これまで移植されたのはPSPのみ。その他機種への移植や最新技術によるリメイク化の要望も多い人気作なのに、意外にもソニーのゲームアーカイブスにすら配信されていない。というか、すべてのシリーズがアーカイブス未配信(任天堂、マイクロソフトも含む)。主題歌などの権利問題が理由では?とされている。
海外でも人気のあるテイルズシリーズ。もちろんエターニアも発売されたのだが、北米ではエターニアのタイトルが『Tales of DestinyⅡ』と、エターニアではなく「デスティニーⅡ」の名で発売している。その理由が、北米の玩具メーカーのマテルが所有する『マスターズ オブ ザ ユニバース』に登場する「エターニア」という名前の商標権侵害を回避するためだと言われていた。
この本当の変更理由だが、実はブランドの認知度。日本ではシリーズ二作目として発売した『テイルズオブデスティニー』だが、北米では一作目として発売されている。本来の一作目スーパーファミコン版『テイルズオブファンタジア』が発売されなかったのである。
まだまだブランドとして認知度が低いテイルズシリーズを北米で売るため、シリーズの正当な続編だと分かりやすくする目的で『テイルズオブデスティニー2』に変更したのである。ただ、日本で2002年に発売した、デスティニーの正統なる続編『テイルズオブデスティニー2』が、混乱を避けるため英語圏で発売できなかったのは当時思いもしなかっただろう(日本、中国、韓国のみ発売)。
ちなみに海外版エターニアだが、一部海外声優の演技の評判が悪い……。
2位 天地創造
発売年:1995年
開発元:クインテット
発売元:エニックス(現:スクウェア・エニックス)
機種:スーパーファミコン
ジャンル:アクションRPG
ユダヤ教、キリスト教の聖典『創世記』の1章「天地創造」をモチーフにした作品。
かつて滅び去った地球の地表の大地を蘇らせて、生物の再生と文明の復興を目指す少年の冒険を描いている。
地球には外側の世界「地表(ちひょう)」と、その内側にある世界「地裏(ちうら)」の二つの世界が存在していた。
地裏に存在する唯一の村クリスタルホルムで長老と一緒に暮らす少年アーク。自由気ままなイタズラ小僧は、村長の家にある「開かずの扉」を壊して、地下に眠る「パンドラの箱」を開けてしまう。
そのせいで、災いがクリスタルホルムを襲い、アークと長老を除いたありとあらゆる生物が氷漬けとなる。
事の重大性と責任を感じたアークは氷漬けされた村の人々を救うため、長老の助言を頼りに地裏に5つ存在する「試練の塔」を目指す。
本作の目的は、滅び去った地表の再生と復興。そして、氷漬けになった村のみんなを救うことだ。まずは序盤の地裏で、5つの塔を攻略して五大陸と島を再生させることから始まる。
大地を復活させたら、次なる舞台は地表。植物や動物、鳥など再生させていく。復活したのは大地のみで、何もないまっさらな状態火星のように赤みを帯びて荒れ果てている。物語を進めて動物と植物を復活させることで、緑豊かな美しい地球へと変わっていく。
そして、最後の再生は人間。人間を復活させて文明が発展すると、アイテムの流通の変化や乗り物が使えるようになる。この文明の発展は物語後半から行えるイベントで、特産品の流通と発明品が発展のキモとなる天地創造の醍醐味の一つ。特産品を輸出したり、発明に必要な材料を調達するなど、困ってる人をアシストして村や町を発展させていくのだ。
ちなみに人間の復活と文明の発展だが、なにも良いことばかりではない。大自然の中で捕獲され、動物園の檻で飼われる動物たちなど人間の復活と文明の発展ならではの鬱展開もあり、中には胸をえぐられる悲しい気持ちになることも……。
ダッシュ、押す、投げる、腹ばいなどの基本動作から、攻撃ボタン連打による連続技や攻撃ボタン長押しによる防御技などの槍術まで(主人公は槍使い)、様々なアクションを駆使してダンジョン探索を行う。
同じく好評だったクインテット社のアクションRPG『ソウルブレイダー』、『ガイア幻想紀』の流れを組んで制作されただけあって、同社の中でも一二を争うほど完成度が高い。
ただ、それだけに戦闘バランスの調整が少し悪いのは本当にもったいない。
本作はステータス上昇による火力への影響が大きい。そのため、開発側が想定した攻略推奨レベルから上か下かで難易度がかなり違ってくる。緊張感のある戦いを望むのなら、あまりレベル上げをしない。逆に難しくて勝てない場合は、レベルをいくつか上げるだけで攻略しやすくなる。
また、物語の中盤に「ブラッディマリー」というマリー・アントワネットをモチーフにした(っぽい)ボスが登場する。これがかなり手強いボスキャラで、多くのプレイヤーが苦戦を強いられた。まず、到着時点で入手できる最強の武器とマリーの属性相性が最悪で、攻撃しても微々たるダメージしか与えられない。属性が分かりにくい作品なので、意外と気づかずに戦う人が多かったのだ。そして、斧の振り下ろしによる強烈な一撃でこちらのHPをごっそり削ってくる。とても中盤で戦うボスとは思えない強さである。少し前に入手できる武器ライトスタッフなどを装備し、振り下ろし後の背後めがけてダッシュ突きし、弱点の腰を狙って連打突きというのが鉄板の攻略法。それでも結構苦戦する。なぜこれを中盤のボス戦として仕込んだのだろうか?
魔法が扱いにくい、メッセージ速度が遅い、レベルアップ演出がうっとおしいなど色々とダメな部分もあるのだが、それらを補って余りあるほど演出面とシナリオが素晴らしい作品。上述でも少し触れたが、はたして人間の再生と文明の発展させたことが地球のために良かったのだろうか?とプレイ中に思ってしまうほど、人間の醜さと愚かさを物語を通して教えられる。
物語は壮大だが、全体的に重くて切ない。あまりの鬱展開に気が滅入るかもしれない。また、説明不足で分かりにくいと思うシーンもあるだろう。しかし、終盤からエンディングにかけての展開が本当に神がかっている。本作に対する不満が帳消しになると言っても過言ではない、そう思わせだけの感動がラストに込められている。
グラフィックとサウンドも、当時のスーパーファミコン作品の中では最高レベル。同年に発売したビッグタイトルの影に埋もれてしまったが、間違いなく名作と呼ぶにふさわしい作品なのである。
ファンが制作した「20周年記念サンドアート」がYouTubeで公開されるなど、ファンから愛されている天地創造だが、これまで移植やリメイクされたことがない。当然移植やリメイクを望む声も多いのだが、開発担当のクインテットが倒産していて権利的に難しい…と思って無理やり納得してきた。ところがなんとクインテット開発のアクションシミュレーション『アクトレイザー』が2021年にフルリメイクされたのである。これによって『天地創造』もリメイクされる可能性が出てきたのは、諦めていたファンも希望の兆しが見えたことであろう。
1位 リンダキューブ
発売年:1995年
開発元:アルファ・システム
発売元:NEC-HE
機種:PCエンジンSUPER CD-ROM2 ※2は上付き文字
ジャンル:ハンティングRPG
タイムリミット8年という期間の中で、100種類以上も登場する動物たちを捕獲していく異色のハンティングRPG。
主人公とヒロインを始めとした登場人物は共通しているが、細かい設定が異なる3本のシナリオが収録されている。
シナリオ・ゲームデザインを桝田省治、演出ディレクターを岩崎啓眞といった、当時PCエンジンユーザーの間で絶大な支持を受けていた和風RPG『天外魔境Ⅱ卍MARU』の中心スタッフで開発された作品。
天外などの王道RPGを作り続けて疲れ果てた桝田氏が、王道・正統RPGとは一線を画したゲームデザインに仕立てた。
太古の地球によく似た緑豊かな自然環境の惑星ネオケニア。地球人と同じ生物構造と言語を持つ原住民ビースチャンが暮らす未開惑星だ。
出生率の低下と原因不明の死亡率の上昇に悩まされていた人類は、ビースチャンのみなぎる生命力とバイタリティに着目し、交配して種を残していくための植民先としてネオケニアを選ぶことにした。その期間は100年。ネオケニアに「死神」と呼ばれる巨大隕石が衝突することが調査で判明していたからである。
それから歳月が流れ、移民団がネオケニアに降りたってからすでに91年が経過していた。死神の衝突まで残すところあと8年。死神が衝突したら、いかなる生物の生存も不可能になる。死神の驚異が刻々と迫る中、空から突如「方舟」が舞い降りてくる。「人間と動物の番(つがい)をひとつずつ乗せよ」という神のお告げとともに……。
この宇宙船「方舟」に、ネオケニアに暮らす動物の番(つがい)を1種類ずつ乗せて星から脱出するのが本作の目的。
その動物捕獲の役目を担うのが、人間の番の代表に選ばれた主人公のケン・チャレンジャー(CV:矢尾一樹)、ケンの幼なじみリンダ(CV:高山みなみ)のふたりである。
衝突までのタイムリミットは8年。時間はリアルタイムで流れ、約1時間がゲーム中の1年として進む。
本作には時間経過による四季が導入されており、春夏秋冬で動物の生息分布が変化。冬だと湖が凍るなど移動範囲にも影響を与える。また、町の住人たちは年数が進むごとに消えていく。要はネオケニアから脱出しているだけなのだが、最終年にもなると殆どの人間が居なくなり、各施設の利用ができなくなる。
本作の戦う相手は、捕獲対象である動物たち。実在する動物とは見た目が異なり、まるでモンスターのような異形の姿をしているものが多い。
実在に近いのから、原型をとどめていないものまで、多種多様な120種類の動物が登場。中にはドラゴンや恐竜などの架空生物、古代生物も激強動物として立ちはだかる。
戦闘はオーソドックスなフロントビュー+コマンド選択式タイプ。これに少しひねりを入れて、前方・左右・後方の最大4方向から動物が出現してバトルを行う、スライド式の戦闘画面になっている。戦闘からの逃走は動物のいない方角が条件なので、動物に四方から囲まれると逃げることができない。
全キャラの行動順は、各キャラの○マークの色で判別できる。行動順は素早さ依存となっており、順番が近づくたびに赤→黄→緑→白と変化。視覚で分かるので、敵の行動前に倒す、回復するといった対策が取れる。
捕獲した動物を方舟に登録するたびに、雄ならケンの、雌ならリンダのステータスが上昇する。また、特定の動物の登録で「獣人」という動物の力を得た変身能力を習得できる。方舟に登録する動物は1種類にひとつがいだけなので、登録済みの余った動物は売却や加工に利用できる。動物との取り引きは本作の貴重な収入源となり、加工して食料や装備を作ることはアイテムの節約や強力な武器防具の入手に繋がる。
また、犬や狼は訓練させて狩猟犬として仲間に加えることができる。戦闘に参加する人間はケンたちのみ。そんなふたりをサポートする貴重な戦力として活躍してくれるのだ。
ちなみに捕獲方法はただ倒せばいいだけ。ただし、ケンたちを強くしすぎると、弱い動物を一撃で粉砕して捕獲できなくなる(経験値ももらえない)。強くなる前に捕獲する、弱い武器を装備するなどの工夫が必要になってくる。
本作の最大の魅力は、狂気に満ちたシナリオと演出だろう。
選べるシナリオはA、B、Cの3つ(リメイク版はDを加えた4つ)。開始直後は同じだが、以降まったく異なるストーリー展開を楽しむことができる。
いわゆるパラレルワールドで、同じ登場人物でもそれぞれ違った顔を見せてくれる。
この3本のシナリオの中でも衝撃的なのが、Aの「MERRY X’MAS」、Bの「HAPPY CHILD」である。
どちらもリンダが不幸に襲われるエグい内容となっており、耐性ない人には少々キツい。ショッキングなシーンが多いため、国内の家庭用ゲーム機市場では初めて性的描写以外で18歳推奨になったほどである。
まあ刺激が強いが、完全な鬱&グロ展開というわけではない。家族や愛というものを考えさせられ、哀れと思いつつもどこか儚さが残る良質なストーリーで満足度が高い。
A&Bとは打って変わって、シナリオC「ASTRO ARK」はとても明るいコメディ系のストーリー。A&Bのパロディネタの演出もあり、思わずニヤリと笑みをこぼしてしまう展開もある。
そもそもAとBは行動範囲と出現する動物に制限がかかっており、Cと比べるとクリア条件も簡単。ストーリーを楽しみながらシステムを学ぶ入門書的な役割を担っている。このAとBでシステムの基礎を学んだ(いきなりCからでも遊べる)、ここからがハンティングRPGの本番。シナリオCで行動範囲がすべて開放され、自由度が一気に加速する。動物収集をメインに進めていくのだが、これがまた難しい。
まず、ケンの怪我を理由に出発時期が1年遅れ、タイムリミットまでの期間は7年しかない。この限られた時間の中で、動物の生息地域と出現条件を把握し、いかに効率よく捕獲していくのかが重要。中には特殊な条件下でしか出現しないレアな動物も存在し、コンプリートの道のりは困難を極める。
なお、出現する動物は120種類。そのうち最低60種以上でクリア可能(ただし、BADエンド)、ちゃんとしたエンディングを見るのであれば90種以上が望ましい(リメイク版は100種以上)。
A&Bと比べるとオマケ程度に感じるシナリオCのストーリーだが、ネオケニアと方舟に関するイベント、真のエンディングとエピローグなど、リンダキューブの核心をつく最も重要なものになっている。
本作は『リンダキューブアゲイン』として、プレステとセガサターン(プレステ版をベースにした完全版)でリメイク。プレステ版でさらなる知名度とファンを獲得している。また、過去には、TV番組「勇者ああああ」でも取り上げられたことがあり、SNSのトレンドに入るなど話題にもなった。
オリジナルからの主な変更点は、アニメーションムービーの追加、グラフィックとシステムの改善、キャラクターデザインの変更、シナリオD(1年以内に動物を集める、やり込みチャレンジ系)の追加などだ。
正直言ってPCエンジン版よりも、このプレステ版(サターン)の方が遊びやすい。ムービーのデキも素晴らしく、キャラデザもPCエンジンに比べて取っつきやすい(特にリンダ)。
このプレステ版はアーカイブスで配信されているが、「プレイステーションクラシック」には収録されなかった。こっちを1位として紹介しても良かったのだが、PCエンジン版は過去に一度も配信されたことがなく、プレミア価格もついて入手しづらい状況。
遊べる環境の乏しさから、リンダパパのCVが神谷明だから(リメイク版は二又一成)、リンダママがPCエンジン版の方が美人で好みだからを理由に、あえてPCエンジン版を紹介させてもらった(最後2つの理由が……)。
まとめ
今では入手困難な作品がずらりと並んだ。
プレミア価格で100万円を超えるものもあるので、財力に余裕がある人は買ってプレイしてみるといいかもしれない。