倒産したゲームメーカーが開発した入手困難な名作ゲームランキング

任天堂、ソニー、スクエア・エニクスなど名作を常に生み出し続けているゲーム会社がある一方、潰れてしまう会社もある。

今回は今は亡き潰れてしまったゲーム会社が開発した名作ゲームをランキング形式で紹介する。

このランキングでは、以下の条件で選定した。

  • 1社につき1作品のみ
  • 合併して現在も社名が残っている会社は除外
  • ゲーム事業からの撤退のみの会社は除外
目次

10位 ラッシング・ビート乱 複製都市

発売年:1992年
開発元:ジャレコ
発売元:ジャレコ
機種:スーパーファミコン
ジャンル:ベルトスクロールアクション

ラッシング・ビートシリーズ3部作の第2弾。

前作のリックとダグラスの最強コンビに加えて、本作では新たに3人の頼れる仲間が登場。頻発する格闘家失踪事件の手がかりを追う。

『ファイナルファイト』のパクリとこき下ろされ、弁解の余地のない失敗作だった前作『ラッシング・ビート』。新しいキャラクターや新要素が追加され、前作から内容が大幅にパワーアップ。パクリ元とは一味違った爽快な作品へと生まれ変わった。

ちなみに本作の発売は前作の3月27日から約9ヶ月後の12月22日と1年も経っていない。

物語の舞台は架空の街ネオ・シスコ。覚醒剤密造組織ジョウカルを壊滅させて、誘拐された妹を救い出した刑事のリック・ノートン、兄妹を幼い頃から見守ってきた巡査部長のダグラス・ビルド。あれから3年の歳月が流れ、リックは刑事を依願退職して格闘技ジムを開業する。
署に内緒で指導にあたるダグラスのほか、新たに3人の格闘家もジムの仲間として加わり、自分たちの技を磨きつつ街の子供たちに格闘技を教えていた。しかし、ジム仲間の3人がある日突然消息を絶って行方不明になってしまう。
「クローン人間製造プロジェクト」のサンプルとして、湾内に浮かぶ人工島に何人もの人間が拉致されている。ルポライターをしているリックの妹から得た失踪事件の情報と消えた仲間との関連性。残された二人は、消えた仲間たちの手がかりを求めて人工島へと向かった。

相手を掴んで投げ技につなげる「組み技」。
ボタン連打で通常攻撃から3連続まで技を叩き込む「連続攻撃」(コンボ系)。
体力ゲージを消費して発動する「必殺技」(必殺技で消費した分はダメージを受けなければ自然に回復)。
一定量のダメージを受けると発動する一定時間無敵&攻撃強化の「怒りモード」。

前作からのシステムに加え、本作では新たなアクションも追加。
相手からの組み技時にタイミングよくボタンを押すことで、逆に組み技で反撃できる「つかみ返し」。
背後から仕掛けてきた組み技に対して、タイミングよくボタンを押すことで固有の技で反撃する「返し技」。
倒れて仰向け状態の相手に追加ダメージを与える「追い打ち」。
意味のないただの決めポーズ「アピール」。ただし、説明書には載っていないアピールから派生する隠し技も存在する。

これらが本作の基本操作。また、ベルトスクロールアクションでは定番の拾ったアイテムを用いた攻撃もある。
ナイフ、岩、焼夷弾、ダンベル、鉄パイプ、有刺鉄線バット、ハンマー、射撃武器のショットガンなどがあるのだが、
本作ではドリンクやホットケーキなどの回復アイテムをその場で使わずに持ち歩いたり、武器として投げてダメージを与えることができる。食べ物だって全力で当たれば痛いに間違いない!

リック・ノートン。マーシャルアーツの使い手。主人公ポジらしい良くも悪くもバランスの取れた性能。
ダグラス・ビルド。プロレス技の使い手。スピードとジャンプ力が欠点が全キャラ随一のパワーを誇る。
ロード・J。柔道と骨法の経験者。スピードが遅いが投げ技が強力で、とにかく使い勝手が良い(初心者向け)。
ウェンディ・ミラン。女子プロレスラー志願。キック技とプロレス技が得意なパワータイプ。
華斬。戸隠流忍法の使い手。唯一無二の三段ジャンプが使え、全キャラ随一のスピードを誇る。やや上級者向けだが本作最強のキャラクター。

プレイ人数に関係なく、ゲーム開始時に5人のキャラクターの中から二人を選択。選ばなかった3人は敵組織に捕らわれた側で、そのクローン体が道中のボスとして登場する。クローン体の撃破で、そのクローン元のキャラクターが次のステージから使用できる仕組みだ。なお、キャラクターは各ステージ毎に選べる(ステージ1はリック、ステージ2はダグラスなど)。

全4ステージ構成とステージ数が少なめ。ただ、各ステージ途中で舞台が変わるほど距離が長い。
いわゆる前半・後半で、ボリューム的に約8~9ステージぐらいの長さはある。

1プレイモード、2プレイモードのほか、前作から引き続きVSモードも搭載。選べるのはプレイヤーキャラクターの5人のみで、新たにCPU戦とタイムアタックが追加された。
タイムアタックは、制限時間内にザコ敵を倒した数を競い合う2P専用モードになっている。

前作で指摘された部分を改善し、アクションゲームとしての面白さを高めた傑作。ただ、ジャンプ技と投げ技が強力すぎて、通常攻撃&連続攻撃の存在が空気になっているなど残念な部分も多い。
特にロード・Jのクローン体の難度がおかしい。強力な投げ技と広範囲の必殺技で付け入る隙がない、あまりにも難しすぎるのである。
まったく倒せない難しさでもないが、攻略パターンを見つけるまで一番苦戦を強いられることは間違いない。
ロード・J戦を除く総合的な攻略の難易度は普通。なので、最初に選ぶキャラクターをロード・Jにしてクローン戦を回避するのも攻略する手立ての1つである

ジャレコは2000年代に海外の通信企業や投資会社などに買収や譲渡で点々とし、2008年に投資業務がメインの「EMCOMホールディングス」に社名変更する。
不採算のゲーム事業部は2006年にを会社分割を行い、ゲーム事業部を二代目ジャレコとして新設。2009年に提携先のゲームヤロウに売却されて完全子会社となる
2013~14年ゲームヤロウが運営するオンラインゲームの接続不可&運営の夜逃げ騒動勃発。親会社ゲームヤロウは破産し、ジャレコは名実ともに消滅した。
なお、ジャレコ全作品の知的財産権は株式会社シティコネクションが継承している。

9位 テラクレスタ

発売年:1985年
開発元:日本物産
発売元:日本物産
機種:アーケード
ジャンル:シューティング

固有武装を備えたパーツとの合体とフォーメーションがウリの縦スクロールシューティング。
戦闘迎撃機ウィングギャリバーを駆り、地球を占領した宇宙魔王マンドラーと戦う。

ニチブツこと日本物産(同名の会社が複数あるが、どれも無関係)の傑作「ムーンクレスタ」の続編(続編は後付け設定)。
1号機のアルファ号(ゲーム内とインストカードには「ウィンガー」と表記)を操作し、両翼の付け根から発射されるショットで空や地上の敵を撃墜して進める。ナムコの「ゼビウス」のように対空・対地を使い分ける必要はなく、ショットのみで空と地上を対処できる。

全16エリアのループ制(2周目以降9~16のループ)。一部エリアでボスのダイコン、チューボ、マンドラーが待ち受けている。この宇宙魔王マンドラーだが別にラスボスというわけでない。エリア7と15という中途半端なタイミングで戦う普通のボス戦になっている。

本作では2~5号機の機体がパワーアップのパーツとして出現。1号機と合体することで、それぞれの機体が所有する武装を撃てるようになる。
2号機のベータ号はショット数の増加。3号機のガンマ号は後方へのショット。4号機のデルタ号は前方に貫通弾。5号機のイプシロン号はバリアを後方に展開できる。

各エリアの決まった位置に存在する格納庫。付近にある数字のオブジェクトを全部破壊すると、数字と同じ機体が入手できる。
この時、合体が5機目だと約8秒間無敵になる「火の鳥」が発動。無敵解除後に被弾すると4号機と5号機が破壊されて1~3号機の3機合体に戻り、4機合体以下の被弾で1号機のみになる。

機体入手時、フォーメーションに必要な「F」が必ず3まで回復する。
2機合体以上のときにFを1消費することで、機体同士で陣形を組んで一定時間の特殊攻撃を行う「フォーメーション」が発動する。
フォーメーションは合体している数で変化。パーツと分離してるため1号機に被弾するリスクはあるが、合体とは違ったテクニカルな攻撃ができる。

横並びで三日月型の広範囲ビームを撃つ、2機合体の「ムーン」。
ナブラを陣形に各機でショットを撃つ、3機合体の「エクステンド」。
ひし形を陣形に前方のパーツ3機が渦巻き上の軌道を描く弾を撃つ、4機合体の「サイクロン」。
パーツで組んだ正方形の陣形中心に1号機が陣取り、各機で弾を撃つ(1号機は中央、右側は右斜、左側は左斜)、5機合体の「クロス」。

このフォーメーションだが、実はエクスデンド以外クセがあって扱いづらい。特に本来一番強いはずのクロスが一番のゴミ性能。そもそも5機合体時は格納庫が出なくなるデメリットがある。
わざと被弾して3機合体に戻し、パーツを取ってFを回復。フォーメーションを使いつつ、5機になったらまた3機に戻すのが鉄板の攻略となる。
ちなみに5機合体した時の機体名が「ウィングギャリバー」である。

今となってはオーソドックスで古臭いと感じる『テラクレスタ』だが、当時はパワーアップシステムが画期的で話題になった作品。フォーメーションや合体を中核に据えたゲームデザインが評価され、幅広いプレイヤーに親しまれて大ヒット。この作品のヒットがニチブツシューティング黄金期の幕開けを飾り、様々な作品を打ち出したのである。

本作の生みの親デザイナーの藤原茂樹。藤原氏を中心に5人の開発メンバーで『テラクレスタ』作り上げたのだが、実はその開発途中でメインプログラマーが辞めている。別のプログラマーが加入して無事完成したのだが、前任者よりもプログラミングの技術力が低かったために藤原氏が思い描いていたプログラム通りに作れず、マンドラーの動作が不完全という作製裏話がある。
また、本作の宣伝用のイメージイラストは、業者向けの発表会で公開された未発売作品『コンステラ』のイメージイラストを流用したもので、ゲーム内の機体デザインとはまったく異なる。
単純にイラストを発注する予算がなかったのが理由なのだが、「テラクレスタがここまで売れるんだったら発注しておくべきだった」とニチブツの社長と藤原氏の二人が揉めて大喧嘩するほど後悔したそうだ。ちなみに本作は開発期間がかなり短い。企画書が85年の5月20日、発売したのが同年の10月と約4~5ヶ月で完成させている。

名作のパチモノやアニメ・特撮作品からパロったり、メダルゲームから脱衣麻雀まで様々なコンテンツを手掛けてきた日本物産。89年を最後にアーケード事業はアダルド作品1本に絞って展開し(藤原氏は退社してハドソンへ)、2001年を最後にコンシューマ事業からも撤退する。麻雀・アダルト作品転向による開発者の相次ぐ退社。日本アミューズメントマシン工業協会からの退会。アミューズメント業界のアダルト作品に対する規制の強化で衰退していき、2007年ついにゲーム開発事業からの撤退まで追い込まれる。2009年プロジェクトEGGに参入するも同年に事業停止。2014年に株式会社ハムスターに自社の版権を譲渡し、その翌年みなし解散で消滅となった。

8位 ぷよぷよ通

発売年:1994年
開発元:コンパイル
発売元:コンパイル
機種:アーケード
ジャンル:落ち物パズルゲーム

へんな表情をした謎の生物「ぷよ」。同じ色のぷよを4個つなげて消す、国産落ちものパズルの大定番『ぷよぷよ』の続編。
新システムが追加されて戦略性がパワーアップ。前作よりも対戦がさらに面白くなった。
この続編のタイトル『ぷよぷよ通』の「通」だが、第「2」弾、「通」信対戦、「通」好みのシステム、すべてをひっくるめての“通”という意味が込められている。

コンパイルの3DダンジョンRPG『魔導物語』。この派生作品として登場したのが「ぷよぷよ」である。
魔導物語に登場するゼリー状のザコ敵「ぷよ」を使った落ちものパズルで、91年にMSXとファミコンディスク(MSXの翌月)で発売された。なお、この最初期版はプロトタイプ扱いで1作目として数えられていない。
プロト版の翌年、シリーズの1作目『ぷよぷよ』がアーケードで稼働開始。
主人公アルルと16匹のモンスターがぷよぷよで勝負をする「ひとりでぷよぷよ」の漫才デモが大好評。愛くるしいキャラクターたちの掛け合いに女性人気も獲得した。

ルールは簡単。上から落ちてくる2個1組のぷよを操作して積み重ねる。置いたぷよの色が縦と横4個以上同じだと弾けて消滅。その上に乗っていたぷよが落下し、もう一度同じ色のぷよが4個以上揃えば再び弾けて連鎖が起こる。連鎖が多いほど高得点を獲得でき、さらに相手フィールドに妨害系のぷよ「おじゃまぷよ」を大量に降らせることができる。
おじゃまぷよを振らせて連鎖の邪魔したり、相手のフィールドを埋め尽くして敗北させることもできる(ぷよの排出口が先に塞がった方が負け)。
2色以上のぷよを同じタイミングで消す「同時消し」、同色の数(赤5個消し、緑6個消しなど)も連鎖に織り交ぜることで、さらなる得点アップにつながる。

相手からの予告ぷよ(これから自分の場に降るおじゃまぷよ)を自分のおじゃまぷよで打ち消すことができる「相殺」。
フィールド内のぷよを全部消したら、相手に追加でおじゃまぷよを送ることができる「全消し」。
縦一列分の細いスペースで、ぷよの上下の色を入れ替えることができる「クイックターン」。
消すと得点が入るボーナス系のおじゃまぷよ「得点ぷよ」、2回消さないと消滅しないおじゃまぷよ「固ぷよ」(1回消すと普通のおじゃまぷよになる)などの新システムが導入された。
特に相殺は、「相手より先におじゃまぷよを降らせる」という先手必勝だった対戦に「連鎖の重要性」をもたらし、ぷよぷよシリーズのシステムを完成へと導いた。

ステージは6層構造の塔が舞台。
各階層に待ち受ける対戦相手と対戦しながら頂上を目指していく。
対戦相手を倒すと成績に応じてEXPを獲得(獲得スコア+α)。合計EXPがクリア必要数に到達で次の階に進められ、足りなければ再び対戦して指EXPを集める。
各階層の対戦相手は最下層から順に、八部衆(8体)、六歌仙(6体)、五人囃子(5体)、四天王(4人)、噂の二人(2人)、例の三人(3人+ラスボス)。
階層に存在する対戦相手全員倒しても合計EXPが足らない場合は階層ごとに決められた延長戦キャラと対戦。それでも足らなければゲームオーバーになる。
なお、スーパーファミコン、セガサターン、プレステ版には「練習モード」と練習専用の対戦相手が追加されている。

欠点もほぼ見当たらず、余計なシステムが実装されていないこともあり、ファンの間で歴代最高傑作の呼び声が高い。
漫才デモが収録されていないため残念がる声も多いが(制作スケジュールが間に合わなかった)、その分対戦までのテンポが早くなって対戦重視のプレイヤーからは評判がいい。
ちなみにスーパーファミコン版やプレステ版などの一部機種で漫才デモが収録されている。

魔導物語やぷよぷよなどのヒット作を生み出してきたコンパイル。ゲーム開発以外にも様々な事業を展開してきたが、これがヒットメーカーを破滅へと誘う。
開発したグループウェアの販売不振、過剰な宣伝広告費、ディズニーに倣って企画したアミューズメント施設「ぷよぷよランド」実現のために投資した莫大な人件費、これらが原因で経営が悪化する。また、組織の基礎ができていない状態で人材を大量採用したため経理や総務がずさんになってたことも要因の一つ。横領や裏リベートを受け取る社員。新品のグッズが大量にオークションへと出品されたり、イベントの売上の一部が行方不明。ぷよぷよランドの企画書流出まであった。
主力のゲーム事業も下降の一途をたどり、98年に一度目の経営破綻。「ぷよぷよ」の知的財産権をセガに譲渡する(セガから02年8月まで「ぷよぷよ」の使用許可を与えられていた)。規模を縮小して続けていたが、2003年に破産宣告で再び経営破綻。その翌年、費用不足のため破産廃止し、株式会社コンパイルの法人格は消滅となった。

その後、2010年代半ばから「年商70億円規模の会社経営から転落。家賃5万円のアパートでアルバイトをしながらソフト開発に取り組む」といった感じの内容で、元社長の仁井谷氏の姿がメディアに取り上げられる。主な収入は介護のアルバイト、You Tubeでプライベート動画公開(視聴者の8~9割が韓国人で、コンパイルのRPG『幻世酔虎伝』のファン)、
また、2016年に新会社「コンパイル○(まる)」を立ち上げ、パズルゲーム『にょきにょき たびだち編』(ニンテンドー3DSダウンロード専用ソフト)を発売して話題になった。
Switch版も制作するためにクラウドファンディングを募るも目標金額に届かず断念。にょきにょきの設定資料だけネットで公開している。

7位 クロックタワー2

発売年:1996年
開発元:ヒューマン
発売元:ヒューマン
機種:プレイステーション
ジャンル:アドベンチャー

ポイント・アンド・クリックを取り入れたホラーアドベンチャー『クロックタワー』の続編。
前作から1年後を舞台に、巨大なハサミを持った不死身の殺人鬼シザーマンの恐怖が襲いかかる。

カーソル(マウスポインター)を動かし、移動する方向や部屋の気になる部分をクリックしてアクションを起こす。ポイント・アンド・クリックの本格ホラーアドベンチャーで大ヒットしたクロックタワーシリーズの2作目。グラフィックなど演出面が強化され、怖さがさらに進化した。

本作のテーマは「平穏な日常が殺人鬼の出現によって一瞬にして非日常に変貌してしまう恐怖」。3DグラフィックとCGムービーによる視覚への恐怖、ノイズとサイレンス(静けさ・無音)による聴覚への恐怖で、現実と非現実的の殺人をできるだけリアルに再現させた。

本作の物語の主人公は二人
ノルウェー全土を震撼させた「クロックタワー事件」の生存者の一人ジェニファー・シンプソン(15歳)。
事件後のジェニファーを身柄を引き取った、オスロの大学で犯罪心理学の助教授ヘレン・マクスウェル(30歳)。
プロローグで犯罪心理学者サミュエル・バートン教授を操作し、助手ハリスとの会話が1回以下だとヘレン編、2回以上だとジェニファー編になる。

シナリオはプロローグ+3つのシナリオで構成されている。

シナリオ1は「大学研究棟」。
目的は研究棟からの脱出。

シナリオ2は「リックの家」or「市立図書館」。
目的はキーアイテム「魔像」の回収。
プロローグとシナリオ2冒頭(会話パート)の選択肢で、ステージと操作キャラクターが変化する。
操作キャラクターは、新聞記者のノラン(ジェニファー編)、警部補のゴッツ(ヘレン編)、ヘレンの3人。
「誰をどこに向かわせるか?」間違えて攻略すると「魔像」の入手を失敗して、次のシナリオでエンディングE(バッドエンド)確定になる。

ラストシナリオは「バロウズ城」。
目的はシザーマンとの決着。
ジェニファー、ヘレンを含めた10人が、シザーマンの手がかりを求めてイギリスへと渡る。
シナリオ1と2のフラグ(アイテム)とイベント上の確定死亡者を除いた参加メンバー全員生存で、最高ランクのエンディングA(グッドエンディング)を獲得できる。
ちなみにエンディングの種類はジェニファーとヘレンそれぞれ5種類(A~E)の合計10種類。エンディングコンプリートによるオマケもある。

ステージ探索中に突然BGMが変化してドキッとさせられるシザーマン出現の合図。この時キャラクターの操作が通常状態から逃走状態に切り替わる。
逃走状態中はオブジェクトのクリック対象が対シザーマン用のみになり、シザーマンが去るまで逃走状態は解除されない。
防衛に失敗してシザーマンに追い込まれるとパニック状態に突入。
カーソルが点滅している間に✕ボタンを連打し、成功すると体力1段階減少と引き換えに脅威を回避、失敗するとシザーマンに殺されてゲームオーバーになる。
体力は白・黄色点滅・赤の3段階あり、赤の状態でパニック状態になると強制ゲームオーバー。また、階段など段差がある場所でのパニック状態は、シザーマンの攻撃が回避できずに強制ゲームオーバーになる。

ホラーの雰囲気や怖さの演出は当時の作品の中では高水準(さすがに今遊ぶとショボい)。スラッシャー映画を思わせる作風で面白いのだが、所詮「13日の金曜日」や「ハロウィン」といった有名殺人鬼の二番煎じ感が否めない。
また、本編で明かされない説明不足も多く、クリア後に少しモヤモヤする部分がある(小説で補完)。まあシナリオの説明不足や煮え切らない終わり方はホラー映画ではよくある手法。十分許容範囲内だし、ストーリー自体は面白い。
本作の不満点はどちらかというとゲームシステムのほう。収集系のマルチエンディングなのにスタッフロールのスキップできない。移動の操作性が悪いなど細かいところが行き届いていない。

『クロックタワー』の生みの親、ディレクターの河野一二三は元々続編の開発に興味がなかった。しかし、次世代機の3Dグラフィック技術の可能性に魅せられ、新たなプラットフォーム先「プレイステーション」での開発に乗り出す。河野氏が本作の開発中に一番影響を受けたのが、CAPCOMのサバイバルホラー『バイオハザード』の存在。同じホラーゲームを制作する者として、バイオハザードのCGグラフィックは河野氏の心に深く印象づけさせた。
より美しいグラフィックで「バイオハザード」を超える作品を目指して制作された『クロックタワー2』。バイオハザードの大ヒットで大きく高まったホラーゲームへの関心度、当時の次世代機の中でプレイステーションが一番売れていた影響もあり、クロックタワー2は40~50万本のヒット作となった。ちなみに開発チームのベテラン勢は前作同様2Dグラフィックでの開発を希望していたのだそうだ。

ヒューマンは1998年に経営状況が悪化し、99年に和議を申請して倒産(負債30億円以上)。その翌年に再建を断念し、和議を取り下げて破産宣告した。ゲームクリエイター養成専門学校は譲渡し、開発スタッフと多くの版権はスパイクに引き継がれていった。

6位 ガンバード

発売年:1994年
開発元:彩京
発売元:彩京
機種:アーケード
ジャンル:シューティング

19世紀のヨーロッパを舞台にしたファンタジー調の縦スクロールシューティング。
個性豊かな5人の冒険者たちが大空を駆け回り、願いを叶える秘宝を求めて戦いを繰り広げる。

好評だった処女作『戦国エース』に続く、縦スクロールシューティングの第2弾として発売。
戦国エースが和風ティストな世界観だったのに対し、本作はスチームパンクを取り入れたファンタジー冒険活劇をベースにした世界観になっている。

選べるキャラクターは5人。
いたずら好きの魔女っ子。大魔法使いマーリンの末裔を自称する13歳の少女「小さな大魔法使いマリオン」。
モチーフは西遊記の孫悟空。仙術と如意棒使いこなすグラマラスな女性の道士「中華な女道士ヤンニャン」。
発明したジェットパックで空を飛ぶ。科学者と考古学者の肩書を持つクールなロリコン「大空の冒険科学者アッシュ」。
ゼンマイ駆動の思考回路を組み込んだ最強ロボ。ロシア製の最強自動兵器「空飛ぶロボット軍人バルナス」。
老体ながら自作した人力ヘリで参戦。同性愛者のベテラン大工職人「愛と根性の宮大工 鉄」。

この5人の冒険者の中から1人を選択。4つ集めればすべての願いが叶うとされている「アトラーの魔鏡」を探して各地を冒険する。

全7ステージの2周エンド(7ステージ中の前半3つは、4種類の中からランダムでステージが決定)。
攻撃はショットとボムの2種類。ショットの長押しで特殊技が発動する。
敵本体との接触はショットのパワーアップが1段階下がるだけ。敵の弾のみにミス判定がある。
それでも少し難しめの難易度だが、頑張れば初心者にもクリアできる程度には押さえている。
ただし、それは1週目まで。2周目からが本番で、敵と弾の密度が増して難しさが大幅にパワーアップしている。
特に通称「列車面(前半ランダム)」の2周目攻略は多くのプレイヤーを悩ませた。

冒険者たちと同じく魔鏡を狙うライバルも存在する。それが冒険者の前に立ちはだかりし盗賊団「トランプ」だ。
女頭領のルージュ、メカニック担当のエース、パイロット担当のクロードによる3人組盗賊団で、兵器(ザコ敵やボス)をけしかけて邪魔してくる。
その正体は兵器会社の女社長、開発部の主任と工場長。もちろん兵器は自社製である。
ちなみにトランプのモデルはタツノコプロ制作のTVアニメ「タイムボカンシリーズ」に登場する悪党3人組。
移植版(プレステ、サターン)で、「ヤッターマン」のシリーズの歴代3人組(昭和)を演じてきた小原乃梨子、八奈見乗児、たてかべ和也という本家の3人がトランプのCVに起用されている。

幕間のデモ、協力プレイ専用の掛け合いデモ、ステージ中のトランプのカットインが挿入など、シューティング作品ながら演出面で楽しませてくれる(2周目はカット)。
また、エンディングの数も豊富で、、各キャラ2種類ずつ(選択肢で分岐)、協力プレイにも各ペア専用エンディングが1種類ずつ用意されている。
1周だけプレイしてエンディング巡りするだけでも意外と楽しい。
ちなみにマリオンとアッシュの協力プレイエンディングで、大人になったマリオンの上半身裸がボカシなしで表示されていた。もちろんこのシーンはアーケード版だけの特権。アーケード完全移植も収録されているか不明だが、なんにせよ時代を感じさせる演出である。

彩京のシューティング作品だと『ストライカーズ1945』を始めとした「ストライカーズシリーズ」の方が完成度高い。
ただ、ゲームデザインが硬派で堅苦しく、敷居も高い。それらを理由にキャラクター性重視で親しみやすい『ガンバード』を彩京の名作として選ばせてもらった。もちろん『戦国エース』と続編『戦国ブレード』、ガンバードの続編『ガンバード2』も甲乙つけがたい名作。中には『対戦ホットギミック』が彩京一番の名作だと挙げる人もいるだろう(いや、それ脱衣麻雀…)。

シューティングを中心にヒット作を飛ばした彩京だったが、アミューズメント事業の失敗、アーケード業界及びシューティングゲームの下火の煽りを受け、2002年にクロスノーツに吸収合併される。クロスノーツ開発の彩京ブランドで新作を発売してきたが、クロスノーツも2009年を最後に営業停止して幕を閉じた。
その後の彩京作品の版権だが、彩京の元制作スタッフ原神敬幸が立ち上げた「株式会社ゼロディブ」が保有。同社は2019年に「株式会社シティコネクション」の完全子会社化となった。

5位 エメラルドドラゴン

発売年:1990年(PC88版1989年)
開発元:グローディア
発売元:グローディア(PC88、PC98版バショウハウス)
機種:X68000(オリジナルはPC-8801mkIISR)
ジャンル:RPG

アニメーションをふんだんに使用したビジュアルシーンとストーリー性を重視した作品。
魔軍の手から人々を救うため、人間の姿に変えた若きドラゴンと人間の少女の冒険を描いている。
なお、オリジナルはPC88版なのだが、実は進行不可になる致命的なバグが存在する(PC88とPC98それぞれ別のバグが存在)。そのためバグのないX68000版を名作として紹介させてもらった。

時空の隔たりの中に存在する聖地イシュ・バーン。
かつて人間とドラゴンが共存する平和な世界だったが、ドラゴンを死に至らしめる強大な呪いがイシュバーン全土に襲いかかる。
おびただしい数の同胞が息を引き取る中、生き残った僅かな数のドラゴンの一族は隣接する異世界へと移り住んだ。
1500年以上の歳月が流れたある日、ドラゴン小国の岸辺にイシュ・バーンから時空を飛び越えて難破船が流れ着く。
難破船で発見されたのは人間の赤ん坊の女の子。赤ん坊はタムリンと名付けられ、100年ぶりに産まれた同じ年頃のブルードラゴンと一緒に実の兄妹のように育てられた。
大きく育ったタムリンは、彼女の行く末を心配していた族長の勧めで故郷のイシュ・バーンに帰ることを決める。
ブルードラゴンのアトルシャンは自分の角を折り、これで角笛を作るようタムリンに角を手渡す。何か困ったことがあったら吹くようにと……。

イシュ・バーンは戦乱の真っ只中、魔王ガルシアの軍勢による侵攻で多くの死者が出ており、聖地という名からは程遠い世界に成り果てていた。
それから3年の月日が流れ、タムリンはまだ戦火の及ばぬ町で傷ついた兵士たちを看病する日々を送っていた。
魔将軍の新鋭部隊の侵攻で、もはや城が制圧されるのも時間の問題。
魔軍に襲われ、惨たらしく死んでいく人々の光景を目の当たりにし、憎しみと怒りがタムリンに魔軍と戦う決心を抱かせる。
タムリンは万感の思いを込めて、角笛を鳴り響かせた。

物語の主人公はブルードラゴンのアトルシャン。
ドラゴンの姿では呪いにかかるため、「銀の鱗」の力で人間に姿を変えてイシュ・バーンを冒険するという設定だ。
とにかくマップが広大過ぎる作品。マップ数が約1万5千画面分もあり、このマップデータの入力に手間取ってPC88の発売が度々延期されていた。

戦闘はエンカウント制のリアルタイム・シミュレーションバトル。
毎ターン行動ポイントを消費して移動や攻撃を行う(消費量は装備・魔法の種類で異なる)。
全員分の行動が終了するとターン終了。プレイヤーと敵のターンを繰り返してバトルが展開する。
アトルシャン以外の仲間の行動はすべてAIによる自動操作。攻撃命令(ターゲット変更)と回復アイテムで仲間をフォローしながら戦う。
非戦闘時のメニュー画面では、隊列(ターンの順番)とフォーメーション(ユニットの開始位置)が変更できる。
ちなみにアトルシャン自身も自動操作に設定可能。面倒なザコ敵との戦闘を全部AI任せることもできる。

レベルアップの概念はアトルシャンとタムリンのみ。物語の進行に合わせて相応の強さの仲間が加入や離脱しながら進んでいく。
パーティメンバーが一人でも死んだらゲームオーバー(セーブデータからやり直し)。仲間がAI操作の中でこの条件はかなり厳しめ。
AIの思考も攻撃寄りなので、仲間の行動がかえって足手纏いになるなど頭を抱えることも多い(PCエンジン&スーパーファミコン版で改善)。

ストーリー・演出・音楽の三拍子が揃った名作と呼ぶに相応しい作品。ビジュアルシーンが魅せる感動ストーリーは多くのプレイヤーを魅了させた。
ただ、シナリオに重点を置いているためシステム周りの不便さと自由度が殆どないのが本当に惜しいところ。複雑構造のダンジョンなど攻略するのも一苦労で、ストーリー展開の良さに気づかぬままプレイを断念した人も多い。乗り物や移動魔法、徒歩の高速化かダッシュの追加、シナリオの分岐やマルチエンディング、収集や育成要素などがあると、さらに面白い作品に仕上がっただろう。まあグローディア作品自体シナリオ重視・戦略性皆無&システムが不便な傾向にあるのではあるが…。
ちなみに難易度とシステム周りはコンシューマ版で概ね改善されて遊びやすくなっている(開発はアルファ・システムが担当)。ただし、スーパーファミコン版はビジュアルシーンやマップが大幅に簡略化され、3本あるサブシナリオがすべて差し替えられている。新規シナリオは一度クリアしたプレイヤーにも嬉しい仕様だが、個人的にお気に入りだった「サギーの章」がなくなったのは残念で仕方ない(攻略は面倒だが良シナリオ)。

不便でオーソドックスなRPGながら多くのファンを獲得した『エメラルドドラゴン』。角川グループ資本によるメディアミックスも大成功。小説・漫画・サントラ・ドラマCDなど展開し、知名度を劇的に広めさせた。
アスキー発行のパソコン雑誌LOGINでは、90年度の読者投票企画BHS(ベスト・ヒット・ソフトウェア)で3位に選ばれ、演出賞も獲得している。また、移植版X68000&MSX版(セットでの集計)が同誌の週間販売数ランキングに初週2位、翌週3位に入るなどその人気の高さをうかがえる。

エメドラをヒットさせたグローディアだったが、その後はヒット作に恵まれずにいつの間にか自然消滅する。90年代半ば~後半頃まで経営していたと思われるが詳しい情報は得られなかった。ただ、2007年頃、横浜港を出発したイギリスの豪華客船に男性が無断で乗船して逮捕され、覚醒剤使用で再逮捕される事件が発生する。それがなんとグローディアの元社長の池亀氏だというから驚きである。

小学館のポプコムが発売したRPG『サバッシュ』(開発元はグローディア名義)開発時、アルバイトの一人として雇われた池亀氏。同じくアルバイトとして入った木村明広氏と共に開発中心メンバーとしてサバッシュを完成させた。池亀氏はグローディアを創業して、サバッシュの戦闘システムをベースにビジュアル面を大幅に強化した『エメラルドドラゴン』を開発した。
逮捕当時アルバイトで生計を立てていた池亀氏。有能プログラマーの落ちっぷりに、グローディア作品ファンも相当がっかりしたことだろう。

4位 新桃太郎伝説

発売年:1993年
開発元:ハドソン
発売元:ハドソン
機種:スーパーファミコン
ジャンル:RPG

日本の有名な昔話を題材にしたRPG『桃太郎伝説』の続編。
前作から6年後、地上の征服を狙う鬼族と桃太郎一行との戦いを描いている。

桃太郎がえんま大王をこらしめてから6年。悪いお鬼たちがいなくなり、人々は昔のような平和な日々を送っていた。しかし、その平和も永遠に続くことはなかった。
地獄の底では、鬼族の長・伐折王(ばさらおう)が地上を鬼族のものにするため動き出したのである。
人々の象徴であり、特殊な力を持つ、月のかぐや姫。まずはかぐや姫を手中に収めるべく、息子のダイダ王子と部下のカルラを月に向かわせた。
かぐや姫の危機に月へと駆けつけた桃太郎だったが、鬼族最強であるダイダ王子にまるで歯が立たず、すべての力を奪われた状態で地上へと叩き出されてしまう。

昔話「桃太郎」のストーリーをベースに「金太郎」や「浦島太郎」などの昔話を織り交ぜたコミカルRPG『桃太郎伝説』。ファミコンで発売され、独自性のシステムとギャグティストの強い演出で大ヒットした人気作品だ。
本作は『桃太郎伝説』の続編というよりかは、正確にはPCエンジンで発売した続編『桃太郎伝説Ⅱ』のリメイク作品にあたる。桃伝Ⅱをベースに様々な改良が加えられ、完全新作と遜色ない新たな桃太郎伝説へと生まれ変わった。

王道のターン制コマンド形式バトル。
本作独自の新システムとして「タクティカル・ウェザー・バトル」が追加。移動中に天気が変化し、敵味方と術の得手不得手に応じて性能に影響を及ぼすというものだ。
また、同じく移動中に発動するのが「絶好調システム」。ランダムで絶好調になり、ステータスや会心率を上昇させて戦闘を有利に働かせる。

戦闘以外では、好きな場所に自分のお城を建築できるようになった。
増築して施設を増やしたり、飛行や潜水機能をつけることが可能。空と海底を移動してストーリーを進めたり、大砲をつければ戦闘支援もできるのだ。
また、戦闘や会話の選択肢などで増減する「人気度」が追加された。
この人気度が高ければ買い物がお得に買えたり、仲間にできるキャラがいるなど良いこと尽くめ。桃太郎らしい清く正しい行動することで増えていく。

仲間の数がとにかく豊富。桃太郎を含めて総勢19人も登場(+お供3匹)する。
個性豊かな面々で編成組むのに迷いそうになるが、ギャンブル性の高い性能などその大半がネタ枠で役に立たない。
ただし、特定の仲間を連れていると一部イベントやボス戦で特別なセリフが発生する。
強さ重視で固定になりがちな編成だが、演出を見るためあえて使えないキャラと編成を組むという楽しみ方もある。

桃伝Ⅱのリメイクだが、シナリオは本作のために書き起こされた新作。Ⅲのために温めていた設定も取り入れている。
シリーズの持ち味だったほのぼの&ギャグを7~8割近くも削ぎ落としたシリアスで重いストーリー展開。村を滅ぼして大虐殺演出など、命が奪われる描写があるのはシリーズの中でも『新桃太郎伝説』だけとなっている。
本作の中でも一際目立ってるのが伐折王の腹心カルラの存在。新たに追加されたキャラクターなのだが、とにかく姑息でゲスい。
伐折王に月や地上を襲わせるよう謀略したり、己の保身のためなら仲間ですら容赦なく殺す。野心に溢れた救いようのない極悪人カルラの存在こそが、桃太郎伝説をダークな世界観へといざなったといっても過言でない(小物感も強いが…)。ちなみにカルラは本作のある重要な役目を担っている。

当初は桃伝と桃伝Ⅱを収録したリメイク作品として発売する予定だった。しかし、あれよあれよという間に容量オーバー。やむを得ず計画を変更して『新桃太郎伝説』の開発がスタートした。
それから開発期間が4ヶ月と短かったこともあって作りの詰めが甘い。バグの数は多いし(裏技として役立つのもある)、操作性やレスポンスも悪い。開発期間の短さが招いた結果だけに、ここは予算オーバーしてでも発売延期して完成度を高めるべきだっただろう。

まあ不満点は多いのだが、どれも許容範囲内。やりこみ要素や遊び心が多くて、RPGとして純粋にハマれる面白さがある。好みが分かれるが、シナリオもシリーズ屈指の完成度を誇る。
ファンからの移植・リメイクの要望も多く、生みの親さくまあきら氏も「いつか完全版を出したい」と当時のインタビューで答えていた。しかし、待てよ暮らせど発売されるのは派生作品である「桃太郎電鉄シリーズ」のほうであった…。

『新桃太郎伝説』以降に発売された桃伝シリーズが意外と少ない。
初代桃伝のリブート作品プレイステーション版『桃太郎伝説』(Windowsでも発売)、桃伝と桃伝Ⅱを収録したゲームボーイカラー版『桃太郎伝説1→2』、ゲームボーイアドバンスで発売したミニゲーム集『桃太郎まつり』(プレステでも発売)、初代桃伝をリメイクしたガラケー版『桃太郎伝説モバイル』。このモバイル版を最後にシリーズは途絶えている。
実はハドソンの不手際によって、保管されていた桃伝シリーズの全プログラムを紛失。桃太郎電鉄シリーズの11以前のプログラムもすべて破棄されており、失った両作品の移植やリメイクは今後二度と作れないとさくまあきら氏が語っている。

そのハドソンだが、98年にメインバンクの銀行が破綻して資金繰りが難航。2001年にコナミが筆頭株主となり、2011年に完全子会社化、その翌年に吸収合併される。ハドソンのブランド名だけが残されていたが、2014年にコナミブランドで統一して結局ブランド名も消滅となった。

3位 探偵 神宮寺三郎 灯火が消えぬ間に

発売年:1999年
開発元:データイースト
発売元:データイースト
機種:プレイステーション
ジャンル:推理アドベンチャー

本格推理アドベンチャー「神宮寺三郎シリーズ」の第7作目。
大好評だった前作「夢の終わり」をベースに新たなシステムが追加されている。

ダンディな渋おじが難事件に挑む探偵神宮寺三郎。
ハードボイルドな作風とゲームデザインが一線を画したコマンド選択式推理アドベンチャーの定番だ。

ファミコンで4作品発売後、その6年後にプレイステーション&セガサターンで5作目が発売する。
6作目「夢の終わり」はシリーズの転換期となった作品。これまでシリーズのキャラクターデザインを担当してきた寺田克也が初めてグラフィック監修し、寺田氏の原画を使用してゲーム内のキャラクターデザインを一新する。その後のシリーズの定番となる新システムと質の高いシナリオが大好評で、多くの神宮寺ファンを虜にした。
そして、今回取り上げる7作目「灯火が消えぬ間に」は、データイーストが手掛けた最期の作品。前作に劣らぬ名作として多くの支持を得ている。

主人公は神宮寺三郎。
新宿の片隅にひっそりと事務所を構える探偵。事件の被害者に対しては親身に接する人情家だが、根っからの悪人に対しては冷徹な態度を持って臨む。愛車はミニクーパー。愛用しているタバコの銘柄はマルボロ。ヘビースモーカーである彼の「タバコを吸う」のコマンドはシリーズのお約束である。

神宮寺探偵事務所に勤める助手の御苑洋子。
数カ国語を使いこなす才女で、卓越したセンスと洞察力を持つ。雑務から調査までこなせて容姿も美人。優秀な探偵助手として神宮寺をサポートする。シリーズで顔のデザインが一番定まらない。寺田氏は洋子のことが苦手で、描くのが最も大変だと語っている。

警視庁新宿淀橋署の刑事 熊野参造。
勤務30年という叩き上げのベテラン刑事で、頑固で責任感が強い職人気質の人情家。神宮寺とは心を許し合う大切な友人の一人。ある事件をきっかけに知り合い、それ以降、神宮寺の人柄に惚れ、何かにつけては神宮寺探偵事務所に顔を見せにいっている。

以上が神宮寺三郎シリーズに欠かすことのできない主要人物たちだ。
本作では、八木正隆という青年がキーパーソンの一人として物語に深く関わる。

ヤクザに追われ、突然事務所に逃げ込んできた青年。神宮寺は八木正隆と名乗る青年を匿い、事務所での寝泊まりを許可する。
翌日、探偵事務所に久々に仕事の依頼が舞い込む。「6年前に家出した娘からの連絡が1年半前に途絶えた」という娘の安否を心配した母親からの調査依頼だ。
熊野に頼まれた最近新宿に出回っている拳銃密輸ルートの捜査協力。そして、八木の恋人が旅行先で滑落事故に巻き込まれたニュース。
何の接点もないと思われるそれぞれの事件は、やがて1つにの事件へと繋がっていく。
愛する想いが人を計り知れない狂気へと導いた、悲しい真実が神宮寺たちを待ち受ける。

本作では新たな試みとしてマルチエンディングが導入された。
マップを移動すると日時が経過し、特定の日数までに必要なフラグを回収していないと強制的にバッドルートへと進む(推理ミスや判断ミスによるバッドエンディングも一部ある)。
全15種類あるエンディング中の13種類がバッドエンディングという多さ。通常のノーマルエンディングのほか、最短日数でクリアするとベストエンディングを見ることができる。
また、寄り道は厳禁だが特定の時間帯でしか発生しないイベントもある。

証人への聞き込みが全員協力的、素直に何でも答えてくれるとは限らない。
会話コマンドを使い、非協力的な人物の信頼度を上げて重要な証言を得る「Iモード」が導入された。
失敗すると相手からの印象が悪くなって、証言を聞き出すのがさらに困難になるため慎重に事を運ばなくてはならないのだ。

いくら名探偵でも一人で調査するのは大変だし、見落としだってあるかもしれない。
そこで、ほかの人物に調査協力を指示するのがCモードである。
洋子や八木などシーンに応じた最大4人の中から適切だと思う人物と指示内容を選択。一日の終わりに頼んだ人物から調査結果が報告されるというもの。
プレイヤーが見落としていた部分をフォローしてくれるほか、重要な情報を拾ってくれることもあるのだ。

これら新システムのほか、調査と状況を分析して推理する「Dモード」。部屋の中などの特定の場所を詳しく調査する「Sモード」が前作から引き続き導入されている。

まさにデータイースト自身が灯火が消えぬ間に出した渾身の一作。前作と同じく良質なシナリオで、グイグイと引き込まれる面白さがある。
ただ、時間概念とマルチエンディングが推理アドベンチャーとしての自由度を奪い、攻略難度を大きく引き上げている。
ミニゲームや限定イベントなど地味に寄り道の多い作品だけに、これらのシステムが足かせになってるのは少し残念である。

なお、Cモードは役に立たないということで次回作から不採用。
本作の新システムからは、聞き込みのIモードのみ、TPS(トーク・プロファイル・システム)として以降のシリーズにも受け継がれた。

名作からヘンなゲームまで(自社広告のキャッチフレーズ「ヘンなゲームならまかせとけ!」)、様々な作品を発売してきたデータイースト。
98年にアーケード事業からの撤退。家庭用ゲーム事業に絞るが、数十億の負債を抱えて99年に和議申請する。その翌年に和議認可となるが、ゲーム以外の様々な事業に手を出したことが裏目になり、03年に自己破産して業務停止で最後を迎えた。
データイーストのライセンスは、ジー・モードなど複数の会社がそれぞれ所有。今回紹介した「神宮寺三郎シリーズ」は現在アークシステムワークスが所有している。

2位 ラストハルマゲドン

発売年:1988年
開発元:ブレイングレイ
発売元:ブレイングレイ
機種:PC-8801
ジャンル:RPG

モンスターを主眼に置いた異色のダークファンタジー作品。
人類が滅んだ地球をめぐり、魔界の魔族と地球外生命体エイリアンとの戦争を描いている。

当時新規新鋭だったブレイングレイの大ヒット作。
企画・シナリオは、後に『学校であった怖い話』を手掛けた飯島健男(現・飯島多紀哉)が担当している。

物語の舞台は地上のすべての生物が滅んだ地球。
人類の長き歴史に幕が降ろされ、復活の時を虎視眈々と伺っていた魔族にとってそれは夢にまで見た時代の到来。
荒廃した地上の様子を伺うため偵察に向かった魔族だったが、地上で謎の生物の奇襲に遭い、偵察隊が次々と倒されてしまう。
地球を131番目の植民地として狙う地球外生命体チリウス星系連合からのメッセージ「おとなしく我らに従うならば良し、歯向かうならば殺すまで、答えは1つ」。
魔族は異星人に宣戦布告し、それぞれの種族から代表者を選んだ。
地上で起こった謎の解明、そして異星人を討伐するために選ばれた12体の勇者。
人類が滅んだ理由、地表の異常現象、空から突然降り注いできた108枚の石版、多くの謎が残る地上で、魔族と異星人の地球をかけた全面戦争が始まろうとしていた。

本作の主人公は、それぞれ特殊な能力を身につけた12種類のモンスター。
ゲームスタートして最初に、昼・夜・サルバンの破砕日の3つの時間帯それぞれにパーティを1つ作成する。

モンスターは種族によって活動する時間帯が異なる。
昼(午前10時~午後10時)に活動する、ハーピィ、オーク。
夜(午後10時~午前10時)に活動する、ゴブリン、、ガーゴイル。
月に1度の異常気象サルバンの破砕日(時間の進行速度が1/10)に活動する、ゴーレム、Aスフィンクス。
自由に編成可能なフリー枠、スケルトン、Gスネーク、スライム、サイクロプス、ミノタウロス、ドラゴニュート。

1パーティ4体ずつ3組のパーティーで物語を進めていく。
この編成の組み合わせを考える上で重要なのがモンスターが持つ「特性」である。
毒無効、武器作成、飛行可能、千里眼など全15種類(PCエンジン版は種類が異なる)。
作成した編成は二度と変えることはできない。

ゲーム内で時間が経過し、時間になったらパーティはその場で強制交代する。
3パーティバランスよく育てることが大切。ただ、サルバンの破砕日は進行速度が1/10とはいえ交代が月1度だけなので、さすがに育てにくい。
ちなみにFM TOWNS版、PCエンジン版、ファミコン版はフリー枠がなくなり、スケルトンとGスネークが昼、スライムとサイクロプスが夜、ミノタウロスとドラゴニュートがサルバンで固定になった。

戦闘はターン制のコマンドバトル。
近接、遠距離(後列への攻撃)、魔法、特殊能力、防御などのコマンドがある。
戦闘の行動によって、7種類のパラメータに経験値が加算されて成長する。
近接なら攻撃力、魔法なら魔力(MP)、防御なら防御力といった感じで上がり、パラメータの総合値がレベルとして表示される。

7種類のパラメータ以外に「ブレイン指数」という固定パラメータがある。
好奇心・殺戮度・自己顕示欲・残酷度・理解力の5種類から構成。好奇心が高いと一定の場所でアイテムを拾ったり、殺戮や残酷は戦闘に影響を与えるなど数値が高いと有益な効果をもたらす。

レベルが一定値に達すると進化する。
レベル5、9、13と3段階進化し、モンスターの名称とグラフィックが変化。例えばガーゴイルならば、バルログ、デビル、デーモンと進化していく。

本作もう1つの成長システムがモンスター同士の合体。
レベル17と34のタイミングで他のモンスターの細胞と融合し(細胞のみ)、さらなる進化を遂げる。
レベル17で3種族、レベル34で2種族の合体候補の中から選べる。
合体すると見た目と名称が変化するほか、細胞を分け与えたモンスターの魔法や特性などを引き継ぐことができる。ただし、欠点も引き継いだり、相反する特性同士が相殺して失われることもある(火に強い、火に弱いなど)。
ちなみにPC88以外はモンスターのデータが見れるモンスター図鑑が搭載されている。PC88版はメーカーにハガキを送ることでモンスター図鑑のディスクを貰うことができた。

壮大なストーリーを彩る豊富なイベント。美麗グラフィック(当時基準)で描かれ、どんでん返しで展開するストーリーはプレイヤーの予想を良い意味で裏切って驚かせてくれる。特にすべての謎が解明される終盤からエンディングの展開がかなり衝撃的だ。
アニメーション効果を駆使したオープニングデモも力を入れて制作されており、PC88版はオープニングデモだけでフロッピーディスク2枚も使用している。

あくまでも演出とビジュアルを重視した作品。
欠点は戦闘バランスの悪さと面倒なイベントが多いことだろう。
特に物語の序盤の目的、世界各地を回って108つの石版を読むイベントがかなり煩わしい。
広大なフィールドマップの中から石版をしらみ潰しに探さなくてはならず、残りの数が少なくなればなるほど困難を極める。

PCエンジン版では、石版が赤色の石版12枚でOKに変更と緩和されている。
また、新ボスの追加、3Dダンジョンから普通の2Dダンジョンに変更、特性に「魔界帰り」が追加(拠点である魔界に一瞬で戻ることができる)、図鑑に合成後のデータが最初から登録済みなど便利な方向にアレンジが施されている。
ただし、最強武器を装備できる種族がゴブリンとオークのみに変更、全体的に敵が強くなっているなど主に戦闘関連が難しくなっている(戦闘バランスの改善という見方もできるが…)。
ちなみにファミコン版は簡略化された劣化移植。こちらも新しくボスが追加されているが、合成相手が固定という面白みがないものになっている(そのためモンスター図鑑もない)。

ブレイングレイは飯島健男が離脱し(飯島氏は後にパンドラボックスを創業)、その後ヒット作も生まれず自然消滅した。

 

1位 伝説のオウガバトル

発売年:1993年
開発元:クエスト
発売元:クエスト
機種:スーパーファミコン
ジャンル:シミュレーションRPG

オウガシリーズの記念すべき第1作目。
神聖ゼテギネア帝国が建国されてから24年、帝国の恐怖政治から人々を解放するため革命を起こした反乱軍の戦いを描いている。

賢者ラシュディはかつての友であったグラン・ゼノビア王を暗殺し、軍事大国ハイランドを率いる女帝エンドラと共に4つの王国を相手に戦争を始める。
圧倒的な軍事力でたちまちゼテギネア大陸全土を制圧。そして、新たに神聖ゼテギネア帝国が誕生する。
帝国の恐怖政治によって苦しめられる民。圧政から逃れようとする者たちや旧王国派の生き残りには追手が差し向けられ、見せしめとして処刑される。
多くの無益な血が流されていくゼテギネアの大地。
帝国歴24年、帝国の支配からゼテギネア大陸を解放するため立ち上がったゼノビア王国騎士団のわずかな生き残りたち。星に導かれし若者をリーダーとして迎え入れ、反乱軍を結成するのであった。

ゼテギネアと呼ばれる時代を描いた全8章からなる叙事詩「オウガバトルサーガ」。
本作はこの5章にあたる物語で、副題が「The March of the Black Queen」となっている。

シミュレーションRPGの戦略性と戦闘に、リアルタイムストラテジーの要素を組み合わせた独自性のあるゲームシステム。ユニット(小隊)をマップに配備して敵と戦い、帝国に占領された町や寺院を解放するのが本作の一連の流れになる。

ステージの数は25種類以上。
各ステージにはボスが存在し、そのボスを倒せばステージクリアとなる。
オピニオンリーダー(主人公)が死亡するとゲームオーバー。また、帝国軍に本拠地(自軍)を占領された場合は、制圧失敗でステージからの退却となる。、

キャラはSサイズとLサイズの2種類あり、Sサイズ5体分までユニットに編成可能。LサイズはSサイズ2体分の枠を消費する。
Sサイズのナイトやウィザード、Lサイズのグリフォンやドラゴンなどキャラのクラス(職業)・種族は様々。条件を満たすことでクラスチェンジすることができる。

本拠地以外のすべての拠点(町・教会)は帝国軍によって支配されている。
ユニットに命令を出し、拠点を攻め落とせれば解放。町の解放は民衆からの支援金、アイテムの購入など、教会は死亡したキャラクターを生き返らせることができる。、
支援金はユニットの運用に必要な大事もの。要は要兵たちの給料のことで、毎日正午に決算が行われ、支援金の支給とコストの支払いが行われる。

拠点の解放時にカオスフレームが変化し、タロットを1枚引くことができる(任意)。
カオスフレームは民衆からの支持度で、イベントやエンディングに左右する大事な要素。ユニットリーダーのアライメント(善悪の数値)、設定された目標クリア日数以内に拠点を解放すると上げることができる。また、後述のタロットでも変動する場合がある。
タロットは運試しのランダム効果。引いたタロット次第で良いこともあれば悪いことも起こる。引いたカードは戦闘用アイテムとしてストック。戦闘ではどのカードも有益な効果となっている。

ユニットの移動はリアルタイムで進行する。
帝国軍側のユニットも同時に動き出しているが、ある程度接近しないとマップでは視認できない。
味方ユニットと敵ユニットが接触すると戦闘が発生。戦闘で行えるのは、作戦変更(4種類)と撤退、タロットの使用のみ。
クラスの攻撃回数に応じて双方のキャラクターが攻撃し、総ダメージの多いユニットが勝利。戦いに敗れたユニットは撤退して少し離れた位置から移動再開となる(コマンドの撤退も同じ)。
HP0になったユニットは死亡となり、ユニットリーダーが死亡したユニットは命令を無視して本拠地に強制帰還する。

リアルタイムストラテジーとRPGを融合させた革新的なゲームデザインが素晴らしい。壮大なストーリーと緻密なグラフィック、とても16ビットゲーム機の初期作品とは思えない完成された作品である。マップに隠された武具の入手、隠し拠点からの発生するイベントなどやり込み要素も盛りだくさん。プレイヤーの行動次第で変化するイベントとマルチエンディングもあるので、1度ならず何度も挑戦して楽しむことができる。
ただし、グッドエンディングの条件が厳しく、目指すのであれば攻略本(攻略サイト)必須レベルに難度が高い。そもそもシステムの取っ付きにくさから最初は普通に苦戦することだろう。カオスフレームの存在も地味に厄介。
最初はカオスフレームを気にせずクリアするのが一番いい。カオスフレームが低いと入手できる武具や仲間があるので(攻略情報が必要になるが…)、一度クリアして慣れてからグッドを目指したほうが気持ちに余裕がある。
ちなみに通称「死神部隊」と呼ばれる裏技に近い必勝攻略法がある。

RPGの二大巨頭として君臨していた「ドラゴンクエスト」と「ファイナルファンタジー」。これらに対抗するため、あえて一般的ではないシステムを取り入れて市場に挑んだ人物が松野泰己。オウガバトルサーガ及び『伝説のオウガバトル』の生みの親だ。
ウォーシミュレーション「マスターオブモンスターズ」、スタッフの薦めでプレイした歴史シミュレーション「信長の野望」でシステムの感触を得て、本作のゲームデザインが誕生する。前年末に発売された「ドラゴンクエストⅤ」、「ファイナルファンタジーⅤ」の話題に埋もれて「隠れた名作」として消えていく可能性もあったが、口コミと広告に力を入れていたおかげで予想していた10万本を上回る40万本の大ヒットとなった。

『伝説のオウガバトル』が、シリーズ1作目でありながら全8章からなる物語の5章からスタートなのは、映画『スターウォーズ』の1作目がエピソード4から公開されたことになぞらえて。また、タイトルの「オウガバトル」と副題の「The March Of The Black Queen」は、ロックバンドのクイーンの2ndアルバムに収録されている「Ogre Battle」と「The March Of The Black Queen」から取られている。
また、オウガバトルの続編である7章『タクティクスオウガ』の副題もクイーンからで、5thアルバムに収録されている「Teo Torriatte(Let Us Cling Together)」(邦題は「手をとりあって」親日家でもあるブライアン・メイが日本のファンに贈った曲)から取られている。

ちなみに松野氏は95年にクエストを退社。スクウェアに入社して『ファイナルファンタジータクティクス』、『ベイグラントストーリー』を手掛ける(FF12開発途中で退社)。そのため松野氏の退社以降にクエストが開発した6章『伝説のオウガバトル64』、『伝説のオウガバトル外伝 ゼノビアの皇子』、『タクティクスオウガ外伝』は松野氏はいっさい関わっていない。

クエストは2002年にゲームソフト開発事業をスクウェア(現・スクウェア・エニックス)に売却して解散となった。

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