世界の猛毒致死量ランキング

世界にはとても恐ろしい”毒”が存在する。

1滴飲めば確実に死にいたるものや、皮膚に付着するだけで危険なものまで様々だ。ポケモンなどのRPGでは”どく状態”は軽視されがちだが、現実世界ではこれ以上にない危険な状態だ。

この記事にたどりついてあなたは、この”毒”という言葉に何か惹かれるものがあるのではないだろうか。

世間一般的には毒と言えば殺人などの事件が思い浮かぶかもしれない。しかし、現存している薬の中には昔は毒だったものがかなりの数ある。

つまり、毒を知ることは、その逆の命の救い方を知ることにもつながる。

そんな危険な毒たちをランキング形式でご紹介しよう。

ランキングは半数致死量(LD50値)で作成した。

※LD50値とは、マウスやモルモットに毒を投与した時に半分が死亡してしまう量のこと。

ちなみに、1円玉の重さが1g、米1粒が22mg、塩1粒が0.1mg

目次

19位 青酸カリ LD50値=5mg/kg

毒性ランキングとしての順位は下の方だが、とても有名なので参考として載せておく。

”体は子供、頭脳は大人”な名探偵が出てくる某探偵漫画でよく登場する毒だ。
その際の描写では突然苦しみだし、すぐに死亡してしまう。

しかし実際はそんなことはなく、多少時間がかかる。青酸カリが毒性を示すのは 胃の中に入り、胃酸と反応して青酸ガスが発生し、そのガスを吸い込んでからだ。

理系の大学に行った人なら知っていると思うが、実験で使用されることもある。金庫の中に保管されており、許可なしでは絶対に持ち出せないようになっている。

 

13位 サリン LD50値=0.35mg/kg 解毒剤:有り

世界を震撼させたあの事件で有名になった猛毒サリン。毒ガスを用いたテロは世界初であり、世界中に衝撃を与えた。オウム真理教が起こした”地下鉄サリン事件”だ。

サリンはコリンエステラーゼという酵素を阻害することで毒性を発揮する。アセチルコリンは神経伝達物質であり、中枢神経や骨格筋などに存在している。アセチルコリンは伝達する役目を終えた後、コリンエステラーゼにより分解され、神経の興奮が収まる。サリンはこれを阻害するため、神経が興奮し続けてしまい呼吸などが正常に行えなくなってしまう。

地下鉄サリン事件(1995年)から20年以上経過したが、被害者は今だに後遺症に苦しんでいる。

解毒剤は有機リン系の毒に効果があるPAM(プラリドキシム)がある。

 

12位 ミクロシスチン LD50値=50μg

湖に発生する”アオコ”を見たことがあるだろうか。水面にびっしり緑色の藻のようなものが発生する現象だ。日本でも霞ヶ浦や印旛沼などで発生することがある。ただ単に水質、見た目が悪いだけの現象ではない。

アオコの原因であるバクテリア、ミクロキスティス属はミクロシスチンという猛毒を出す。

ミクロシスチンは毒性が非常に高いが、日本の浄水場でも検出されることがある。主に肝臓を傷害し、続けて摂取し続けると肝臓癌、肝硬変になり死亡してしまう。

日本の場合水道中のミクロシスチン濃度は0.1μg/L以下と基準が設けられているので安心だ。しかし、いくら基準があるとはいえ微量は接種していると考えることもできる。不安を覚える方は市販の飲料水で対応してみてもいいかもしれない。

 

11位 リシン LD50値=30μg/kg 解毒剤:無し

リシンはトウゴマの種に含まれているたんぱく質の一種。オバマ大統領在任中のホワイトハウスあてにリシン入りの手紙が送られてきた事件が有名だろう。

リシンは致死量こそ少ないが、毒性を発揮するまでに10時間ほど時間ががかる。リシンの毒性は普通の毒と違い、たんぱく質の合成を止める作用がある。その結果、正常に細胞が分裂できなくなり毒性が出る。よく似た作用を示すものとしては、7位のベロ毒素がある。リシンの方が強力な理由は、ベロ毒素は腸管に症状が集中するのに対して、リシンは全身に症状広がる。

症状としては細胞分裂が阻害されることによるものが多く、口から摂取しても、吸い込んでもアウトだ。

10位 テトロドトキシン LD50値=20μg 解毒剤:無し

テトロドドキシンはフグに含まれている毒だ。注意喚起をこれだけされているにも関わらず、自分で調理して中毒になる人が後を絶たない。

それもそのはず、フグはとても美味しいし、高級食材でもあるので、自分で釣って食べる人が少なからずいるのだろう。店で食べると数万円することが多いのでお得だ。

テトロドトキシンは神経毒で、摂取してしまった場合、唇や舌先のしびれが出てくる。その後、麻痺する部位が広がっていき、最終的に呼吸筋が麻痺して死亡してしまう。死因は窒息死。

毒が多い部位としては、肝臓、卵巣などの内臓だ。フグを調理する際はこの猛毒の部位を完全に取り除いて食べる。
毒の量としては、高級食材のトラフグよりも、クサフグの方が上だ。クサフグは毒が多い卵巣や肝臓だと、10g以下で致死量に達する。

ちなみに、養殖のフグで餌を管理されているフグは毒を持たないことが分かっている。大分県では毒のないフグの養殖が盛んで、フグの肝を食べることができる。

解毒剤は現在見つかっておらず、対症療法しか治療法はない。呼吸が麻痺して死亡してしまうので人工呼吸を続けていれば助かる。口から毒を摂取した人に人工呼吸は絶対に行ってはいけない。あなたも一緒に天国へ行ってしまうことになる。

 

9位 VX LD50値=20μg

VXは世界で初めて人工的に作られた毒ガスだ。他にも毒ガスは色々あるが、そのどれもが自然にあるものを流用したに過ぎない。”人類が作った化学物質の中で最も毒性が強い物質”と言われることもある。

13位のサリンと同じく、有機リン系の毒ガスだ。無味無臭であり、粘着性を持つエアロゾルとして散布する。味も臭いも無いので吸い込んだことに気づかずに症状が出てくる。皮膚からも吸収されてしまうのでガスマスクだけでは防護することができない。さらに、安定性が高い物質なので、長く残留してしまう。こんなものが大都市で散布されることを想像するだけで恐ろしい・・・。

作用、症状、解毒剤はサリンと同じである。

 

8位 バトラコトキシン LD50値=5μg

バトラコトキシンはコロンビアの『モウドクフキヤガエル』から発見された。すでに名前からヤバそうな雰囲気がぷんぷんしている。

原住民が吹矢の毒に使って動物を狩っていたくらいなので毒性はとても強い。

この毒はカエルの体内で作られるものではなく、何かしらの昆虫を食べてその毒を体内に貯蔵しているようだ。※現在も毒素の原料になっている昆虫は特定されていない。

バトラコトキシンの毒性は神経の『Naチャネル』を開いたままにすることで発揮される。

症状としては神経が興奮し続ける状態になり、筋肉が異常に収縮する。これが呼吸筋や、心臓にまで作用することで死にいたる。

7位 ホモバトラコトキシン LD50値=2μg

引用元:Pitohui dichrous|New Guinea Birds

ホモバトラコトキシンは名前が似ていることからも分かる通り、バトラコトキシンと似た化学構造をしている。バトラコトキシンと似ているがこの毒を持っている生物同士は全く別の種類だ。”ピトフーイ”という世にも珍しい毒をもった鳥だ。

1992年に発見されたばかりの鳥で、発見された経緯も偶然によるものだった。

ジャングルに仕掛けておいた網にかかったピトフーイをはずそうとしたところ、引っかかれて出血してしまった。傷を舐めて消毒しようとしたところ舌がしびれた。不思議に思って羽を舌の上に乗せてみたところ、さらにしびれたことから毒を持っていることが判明した。現地の人の間では昔から「食べられない鳥」として語り継がれていた。

この鳥も何かしらの昆虫を食べて体内に毒を貯蔵しているようだ。この鳥を別の場所で育てると、体内に毒が作られないことが分かっている。

毒性、症状はバトラコトキシンとほぼ同じだ。

 

6位 2,3,7,8-テトラクロロジベンゾダイオキシン LD50値=10μg

ダイオキシンとは一つの物質を指す名前ではなく、200種類ほどあるダイオキシン類のことだ。

2000年に施行された”ダイオキシン類対策特別措置法”により、一般家庭の焼却炉でごみを燃やすことが禁止されて毒性が強いイメージが着いた。

しかし、最近の研究でダイオキシンには一昔前に騒がれていたほどの毒性が無いということが分かってきた。

だからと言ってダイオキシン類全てが毒性が無いど言うわけではなく、「2,3,7,8-テトラクロロジベンゾダイオキシン」だけは別格の毒性を持っている。

しかし、この毒性もモルモットや犬など、動物の種類によってかなりばらつきがある。人間で実験されたわけではないので確かなことは分からないようだ。

 

5位 ベロ毒素 LD50値=1μg

ベロ毒素は大腸菌O-157が産生する毒素。

1990年代に集団食中毒で有名になったのを覚えているだろうか。幸いなことに、周りに感染者が出なかったのであまり関心は無かったが、致死量の少なさからもわかるとおり、実はとても怖い食中毒だったのだ。

ベロ毒素の最大の特徴はたんぱく質の合成を阻害する点だ。

たんぱく質の合成を阻害されると、細胞分裂が正常に行えない。そのため、腸の粘膜が再生されずに出血してしまうのだ。重症例では腎臓が正常に機能しなくなるので治癒したとしても後遺症に苦しむことになる。

とても小さな細菌が出す量の毒で死亡例もあるくらいなので、人為的に投与すると・・・

想像するだけで恐ろしい・・・

 

4位 パリトキシン LD50値=0.1μg/kg 解毒剤:無し

アオブダイなどの魚の肝臓に蓄積されている毒素。元々はハワイなどに生息しているスナギンチャクというイソギンチャクの仲間が持っている毒だが、アオブダイなどの魚はこのイソギンチャクを食べるため肝臓に多量のパリトキシンが蓄積される。

症状としては筋肉痛、尿の変色(茶褐色)、麻痺・痙攣などが見られる。重症の場合、呼吸困難、不整脈、ショックや腎障害が起こる。さらに症状が進むと、冠状動脈が極度に収縮し、死に至る。

厚生労働省のHPを見ても、有効な対処法が書いていない。もし、パリトキシンを摂取してしまった場合は致死量以下であることを祈るしかないようだ。

3位 マイトトキシン LD50値=0.05μg/kg 解毒剤:無し

引用元:磯の魚たち|サザナミハギ

シガテラ毒の一種として有名であり、釣りをする人なら覚えておかないといけない毒だ。こんなに可愛い見た目の魚が人を簡単に殺してしまうほどの猛毒を持っているのだ。

シガテラ毒による中毒症状は、食べたあと30分から数時間ほどで現れ、腹痛,嘔吐,下痢などの食中毒症状が起き、血圧低下,関節痛,筋肉痛,運動障害などの症状が現れます。特に顕著に現れる症状として、ドライアイスセンセーション(普通の水が極端に冷たく感じたり、暖かいものが冷たく感じたりする)と呼ばれる知覚異常があり、重症の場合は神経系の障害により、麻痺,痙攣そしてショック状態となり、昏睡し死亡に至る(死亡率は低い)場合があります。また、症状が数ヶ月に及ぶ事があるそうです。

引用元:魚の毒

この毒は普通の食中毒と見分けることがとても難しい。唯一特徴的な症状が『ドライアイスセンセーション』。これはドライアイスに触れてしまったような痛みが皮膚に生じる。これがあるかないかである程度診断しなければならない。

もしこの症状があった場合はすぐに病院に連れていくように。

救急車を呼ぶことを恥ずかしがってはいけない。しかし、呼びすぎてもいけない。難しいところだ。

 

2位 テタヌストキシン  LD50値=0.02μg/kg 解毒剤:無し

テタヌストキシンという毒を聞いたことがある人は少ないだろう。テタヌストキシンを一般的な呼び方で言うと、『破傷風トキシン』

破傷風と言えば傷口から感染してしまうあれだ。破傷風菌は酸素があるところでは生きることができない嫌気性菌だ。そのため、土の中に生息している。ただ、土の中ならどこにでもいるので、あなたも転んですり傷ができた時は注意した方がいい。

 

小さい頃には予防接種も受けているはずだ。4種混合ワクチンの中に破傷風ワクチンも含まれている。テタヌストキシンの特徴的な症状は別名弓なり反射とも呼ばれる強直性痙攣だ。破傷風菌は脊髄などの中枢神経を好むので反射が起こる。弓なり反射は俗に言うブリッジの体勢をしてしまう。この反射によって背骨を骨折してしまう患者もいる。

更に怖いのが、強直性痙攣が起こっている時も意識は鮮明なことだ。背骨が折れる時の苦痛をしっかり味わうことができる。

破傷風菌は何か人間に恨みでもあるのだろうか。そうでないとここまで苦しめる理由がないはずだ。

 

1位 ボツリヌストキシン LD50値=0.0011μg/kg 解毒剤:有り

ボツリヌストキシンをマンガGTOのひとコマで知ったという人も多いのではないだろうか。神崎麗美が先輩ヤンキーを撃退する際に白い粉を振りまいた後に放った台詞の中にボツリヌストキシンが入っていた。

ボツリヌストキシンを出すボツリヌス菌はどこの土の中にもいる。

ボツリヌストキシンはボツリヌス菌という細菌が出す毒で、致死量はなんと0.8μg!1gで約1250万人もの命を奪うことができる。地球の人口が約70億人ということを考えると、560gで全人類を死滅させることができる計算だ。

恐ろしいほどの毒性だということが分かるだろう。ボツリヌス菌は主に土の中に生息しておりどこにでもいる菌だ。君の家の周りを掘り返しても見つけられる

ボツリヌストキシンは神経毒で、筋肉を麻痺させることで毒性を発揮する。最終的に呼吸筋が麻痺し、死に至る。

ちなみに毒を摂取してから死亡するまでの時間は意外と長く、24時間以内に抗毒素を投与すれば命が助かる可能性が高い。ものすごい猛毒だというから絶対に助からないのかと思いきや、以外と人道的な毒だ。

 

番外編

最近になって新たに発見された「ボツリヌス菌H型」が出す毒素は他のボツリヌストキシンをはるかに凌駕しており、約60倍の毒性がある。

60倍の毒性ということは地球上の人類を全滅させるのに9g程しか必要ない計算だ。ここまでの毒性を持つようになった経緯をボツリヌス菌に問いただしたい。

 

まとめ

いかがだろうか。世界にはこんなに恐ろしい毒が数多くある。

上位二つの毒は致死量こそ少ないが、細菌が作り出すのでごく微量しか出てこない。500g集めようと思うと大規模な研究施設が必要だ。
しかも、この2種は空気に触れると死んでしまう”嫌気性”という特徴を持っているため、怪我をした瞬間に傷口に入らないと感染はしない。

ちなみに、1位のボツリヌストキシンは美容整形で使用されているし、1位ボツリヌストキシンと2位手テタヌストキシンを組み合わせて強力な鎮痛剤として研究が進んでいる。

このように強力な毒でも適正に使用すれば人を助ける薬に変わることもある。そのような物質を知りたい人はこちら↓

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