最近話題になっている外来種の侵入。
ブラックバスやヒアリなどが有名だが、その他の危険な外来種については知っている人の方が少ないのが現状だ。あまり知られていない外来種の中にも人間に危害を及ぼすものや、日本の固有種を脅かすものまでいる。
日本は島国のなので、在来種は凶悪な天敵に襲われるということも少なく、生存競争において弱い種類が多い。
日本人に危害が加わらないようにするのはもちろんのこと、日本の固有種を守るためにも外来種に関する正しい知識を知っておこう。
10位 カダヤシ
引用元:カダヤシ|魚類図鑑
カダヤシは北アメリカのミシシッピ川流域からメキシコ北部までに生息している淡水魚。名前の由来はカの子供であるボウフラを食べることから付いた。メダカによく似ているが、異なった特徴を持っている。
- メダカは卵、カダヤシはお腹の中で孵化させて稚魚を産む。
- 水質汚濁や低水温に強い。
- 淡水魚の卵や稚魚も食べる。
お腹で卵を孵化させる卵胎生であり、産卵場所を選ばない。水質の変化に強い。他の魚を食べる。この3つの特徴で侵略的外来種の一つに認定されている。
日本に持ち込まれたのは1916年。1979年代から蚊の駆除の為に日本各地に放流された。生息域が似ているメダカはこのカダヤシの輸入によって激減した。
現在、メダカは絶滅危惧種に指定されている。
9位 アライグマ
前足で食べ物を洗うしぐさが可愛くて人気のアライグマ。アニメ”あらいぐまラスカル”でも取り上げられるほど人気の動物だ。
元々は北アメリカが原産で、日本にいる動物ではなかった。
日本に持ち込まれた原因は上で挙げたラス○ルブームによるものだ。ラ○カルが可愛すぎて「この可愛い動物を飼いたい!」と言う人が激増した。
しかし、アライグマは気性が荒く、成長すると全長140cm、体重28kgほどになるので、可愛いもの好きの女性には手に負えなくなってしまう。その結果、飼育放棄、脱走した個体が繁殖していった。
アライグマが日本で劇的に増えた原因は、繁殖力の高さ、雑食性、適応能力の高さだ。
アライグマは年に6~8頭の子供を産み、日本には天敵がいないため生存率も高い。食物も果物、木の実、昆虫、両生類、小型の哺乳類など色々な物を食べられるため、餓死してしまうことも無い。そして、平地から気温の低い山地までどこにでも適応してしまう。
2005年には特定外来生物に指定され、2008年には14000頭も捕獲されている。近づくと攻撃される可能性があるので個人での駆除は避けた方がいい。
8位 ブラックバス
ブラックバスは北米原産の淡水魚でスズキの仲間であるサンフィッシュ科だ。
釣りの対象魚として人気がある。強烈な引きと、水面からはねるアグレッシブな動きがゲームフィッシングファンにとってはたまらないのだ。ルアーやワームといった疑似餌で釣りをするので、餌を使う釣りよりも手軽に行えるのも人気の秘訣だ。
ブラックバスが日本に持ち込まれたのは1925年、赤星鉄馬氏によって芦ノ湖に持ち込まれたのが最初だ。この時は日本の食糧事情を考慮して食用魚として落ち込まれた。放流地に芦ノ湖が選ばれたのもむやみに生息地が拡散しないようにと考慮された結果だ。
しかし、1970年代以降ルアーフィッシングブームが到来。その際に無責任な釣り人たちが北海道を除く45都道府県に移植された。
その後、ブラックバスが生態系に与える影響の大きさが判明し、2005年6月に施行された「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(通称:外来生物法)」おいてラージマウスバスとスモールマウスバスが「特定外来生物」に指定された。
ブラックバスは肉食性で、魚、エビ、水中に落ちてきた昆虫など、何でも食べてしまう。大型のブラックバスの胃の中から野鳥が見つかったという報告まであるほどだ。体重が1kgになるまでに食べる餌の量は5~10kgほどと言われており、とんでもない大食いであることが分かる。
この食性の為に生態系に与える影響は計り知れない。魚は絶滅してしまうし、その小魚を食べていた鳥も影響を受ける。
7位 ブルーギル
ブルーギルは北米原産のサンフィッシュ科の魚。8位のブラックバスと同じ科に属してはいるが大きさや知名度は落ちる。しかし、日本の固有種に対する危険度ではブラックバスに勝るとされている。
日本に入ってきた経緯は、あまり公で語られることはない。なぜなら、天皇陛下が皇太子時代に持ち込まれたのが原因だからだ。
しかし、当時の食糧事情を考えると天皇陛下を責めるわけにはいかない。1960年代初頭まで、日本の肉類消費量は世界平均の3分の1しかなかった。そのために、安定して漁獲できる魚が必要だったのだ。さらに、ブルーギルの養殖は国が先陣を切って行っていた。
ブルーギルがブラックバスよりも危険と言われている要因は、ブルーギルの食性によるものだ。ブラックバスは主に魚を食べるが、ブルーギルは魚の卵を食べる。そのため、日本の固有種が激減してしまうのだ。
ブルーギルは食べてもおいしいというので、駆除を名目につって食べてみるのもいいかもしれない。
6位 オオヒキガエル
オオヒキガエルは南アメリカ原産のカエル。サトウキビ畑の害虫駆除の為に世界各国に移入された。体長は10~15センチと日本に住んでいるカエルに比べると大きい。実は皮膚から毒を出していて、触れると炎症を起こし、目に入ってしまうと失明の可能性がある。
ヒキガエルの生息地は今のところ限られており、小笠原諸島や琉球列島にしかいない。繁殖力が強く、雑食性のため、日本の固有種に危険が及ぶ。そのため、2005年には特定外来生物に認定された。
ヒキガエルが出す分泌液は乾燥させて生薬(センソ)として使われている。皮は靴などに加工されることもある。
5位 アリゲーターガー
アリゲーターガーはアメリカのテキサス州が原産の大型淡水魚。大きなもので全長2mを超え、ワニのような鋭い歯がある口が特徴的な魚だ。”硬骨魚類”と言われる太古の昔から姿を変えずに地球上に生き続ける生きた化石の一つだ。一説によると1億年以上も昔からこの姿を変えていないそうだ。
アリゲーターガーが日本の河川で見つかるようになった要因は無責任な飼い主による放流だ。大きいものでは2mを超えることがあるので、とても巨大な水槽が必要になってくる。成長することを計算せずに飼育を始めて水槽が足りなくなって放棄するというパターンが多い。飼育すること自体は違法ではないのでいいのだが、逃がすのはいただけない。
アリゲーターガーが見つかった場所は下記の通り。
- 2004年 水無瀬川(熊本県)
- 2008年 琵琶湖(滋賀県)
- 2016年 名古屋城(愛知県)
- 2016年 淀川(大阪府)
これ以外にも多くの場所で見つかっている。
元々スポーツフィッシングの対象魚として人気が高く、アメリカまで行かないと釣ることができなかった魚なので、アリゲーターガーが見つかった場所では、ニュースを聞きつけ多くの人が釣りに訪れているようだ。
ただし、鋭い歯や硬いうろこ、重い体をぶつけられると大けがをする可能性があるのであくまで自己責任で。※YouTubeの動画で、釣り上げたアリゲーターガーが暴れて頭を強打し失神してしまう動画もありました。
4位 アメリカザリガニ
アメリカザリガニは名前の通りアメリカが原産。
日本でも昔からスルメを使ったザリガニ釣りが行われていることから日本に元から生息していたと思われがちだが、日本には存在しなかった種だ。日本には固有種のニホンザリガニがいるが、アメリカザリガニが生息数を伸ばした現在は、ザリガニと言えば基本的にアメリカザリガニのことを指す。
最初に日本に入ってきたのは1927年。ウシガエルの食糧候補として人為的に持ち込まれた。揚げたりして食べると人間でも食べることができるが、日本人の嗜好に合わなかったためザリガニを採って食べるということはほとんどない。原産地であるミシシッピ州では郷土料理として親しまれている。
平野部の水田や用水路などの流れがあまりない水の中で一生を過ごす。食性は雑食性で基本的に自分より小さい生き物は何でも食べる。そのため、アメリカザリガニが侵入した水域では小動物や植物が食い荒らされ、アメリカザリガニも餓死してしまうということまである。
日本の固有種であるタガメやゲンゴロウなどは生息場所や食物までかぶってしまい、数を激減させた。
日本で生息していない地域は無いということ程に広がった原因は、ザリガニ釣りで捕まえた子供が飼育するのに飽きて近くの水辺に逃がしてしまったことが大きいようだ。
子供にもザリガニが外来種であることを伝え、飼育を最後までしっかりするように教えることが大事だ。
3位 ワニガメ
ワニガメは北アメリカ原産の巨大な亀。成長すると甲羅の長さが80cm、全長1.2mほどにもなる。大きい個体では100kgを超えるものも存在する。甲羅は非常に硬く、生息地で共存しているアリゲーターに捕食されないためだと考えられている。
特徴的なのは大きな頭。噛みつく力に特化して進化したため、甲羅の中にしまえないほど巨大化してしまった。元々の生息地である北アメリカでも、天敵と呼べる動物がワニしかいなかったため身を守る必要が無いのだろう。
この大きな頭部による噛みつく力は300kg~500kgと言われ、人間の平均70kgと比較しても非常に強いことが分かる。70kgの人間でさえもその気になれば人の指くらいなら簡単に噛みちぎることができるので、ワニガメにとってはいとも簡単だろう。
今まででワニガメが捕獲された場所は以下の通り。
- 2006年 上野公園 不忍池(東京都)
- 2009年 堀川(愛知県)
- 2009年 福岡競艇場(福岡県)
- 2010年 大阪港(大阪府)
- 2011年 渋谷区鍋島松濤公園(東京都)
- 2013年 嘉手納町屋良比謝川(沖縄県)
ペットとして持ち込まれたものが野生化したケースが多い。2006年のケースでは卵も一緒に見つかっており、繁殖が懸念されたが、有精卵ではなかったようだ。
2017年現在は飼育するのに多くの書類を提出しなければならなくなった。更に、申請するのにも手数料が数万円かかる上に、高額なマイクロチップを埋め込まなければならない。
ワニガメは基本的に流れがあまりない濁った水質を好むので、人が噛まれるといった事故は起こりにくい。汚い池に入ろうと考える人は少ないからだ。しかも、ワニガメは意外と臆病で、人間が近づくと逃げてしまう。人間が噛まれる事故が起こる可能性としては人間が興味本位でいたずらをした時だ。
もし、近くの池でワニガメを見つけても決して触ってはいけない。指を数本失うことになるかもしれない。
2位 アフリカマイマイ
引用元:アフリカマイマイ:触らないでちょーだい!|FC2ブログ
アフリカマイマイは殻の幅が7~8cm、高さが20cm近くまで成長する世界最大級のカタツムリだ。日本でカタツムリと言えばかわいいサイズのものをよく見かけるが、こいつはとにかくでかい。
だが、噛んだりしないので直接的な被害はない。
アフリカマイマイの危険なところは体内に潜んでいる寄生虫だ。
広東住血線虫という線虫で、幼虫の大きさは0.2~0.5ミリくらい。成虫になると、22ミリから23ミリくらいになる。こいつが人間の口から侵入してしまうと、胃や腸に穴を開けて脊髄に入り脳に移動する。その後、脳内で出血、肉芽腫形成、好酸球性脳脊髄膜炎などを引き起こす。好酸球性脳脊髄膜炎は激しい頭痛、麻痺を主症状とする疾患で、重症化すると死に至る。実際に日本でも2000年に沖縄で7歳の女の子が広東住血線虫に寄生されたことが原因で亡くなっている。
感染経路は主に口からで、アフリカマイマイを触って洗ってない手で食べ物を食べて感染する。さらに恐ろしいのが、アフリカマイマイが這った跡に触れてもアウトなところだ。アフリカマイマイが生息している地域で取れた野菜はきちんと洗ってから食べないと危険だ。
アフリカマイマイは2017年現在、沖縄や奄美諸島、小笠原諸島で生息が確認されているが、本土での生息は今のところ確認されていない。
世界各国でもこの種の生体は持ち込みが禁止されており、アメリカでは罰金$1000が科せられる。
1位 ヒアリ
ヒアリは南米原産のアリ。
ハチのようにおしりの部分に毒針を持っているのが特徴で、この針で何度も刺すことができる。毒性が非常に強く、噛まれると酷いやけどを負ったような痛みが出るのでこの名前が付いた。毒の成分は90%がコショウの辛み成分”ピペリジン化合物”だ。さらに”ソノプレシン”という毒も含まれている。ソノプレシンは神経伝達物質の阻害などの作用があり、大量のヒアリに刺されるとこの作用で重篤な症状が出てしまう。
このアリは非常に生命力が強く、極端な寒冷地以外には適応できる。そのため、冬がある日本でも繁殖できるのが恐ろしい。さらに、大量の水に対処する方法も持っている。下の画像のように数万匹が体を寄せ合って筏のようになり、移動する。日本の梅雨も簡単に乗り切ることができる。
引用元: TheCoz (Creative Commons Attribution-Share Alike 4.0 International)
この異常な生存能力のため、原産の南米から、北米への侵入が確認されており、アメリカでは毎年100人以上死者を出している。2017年現在、中国や台湾でも生息が確認されている。
最近、日本でもコンテナにまぎれて運び込まれそうになったという事例が多発している。いずれの事例でも封じ込め作戦が功を奏し、本土に定着することは防ぐことができている。
ところが、専門家の間では日本への定着は時間の問題であり、そう遠くない将来住み着いてしまうと考えられている。
その際の対策としては、ヒアリの天敵である”ノミバエ”による駆除が有効だとされている。その際に懸念されるのがノミバエによる在来種への被害だ。外来種の駆除に外来種を持ち込むといういたちごっこにさせないように侵入を未然に防がないといけない。
まとめ
ランキングに登場した生き物の全てが元々人間によって持ち込まれ、繁殖したものだ。
人間のエゴによって持ち込まれ、害獣に指定されて駆除される。人間は自分勝手な生き物だと悲しくなってしまう。
このような生き物をこれ以上増やさない為にも、飼育するなら最後まで面倒をみるという当たり前なことを守らないといけない。