人類は昔から戦争を行ってきた。
初めはこん棒やヤリ、次に弓矢、鉄砲、とより効率よく、使用者に危険が及ばないように、離れた場所から攻撃できるように色々な武器を発明してきた。
最終的に、一度に多くの人に攻撃ができる爆弾が戦争での主力兵器となった。
今回はそんな現代の主力兵器である爆弾の威力をランキング形式で見てみよう。
16位 MK3手榴弾
TNT換算 0.3㎏
アメリカ軍、陸上自衛隊が使用している手榴弾。この手榴弾は破片を撒き散らすタイプの手榴弾ではなく、爆発の力で敵を無力化する。水中でも爆発すれば水圧で潜水している敵にダメージを与えられる。
ただ、有効範囲は非常に狭く、近くに味方がいる場合でも使用することができる。危害範囲は2mほどとされている。
15位 対戦車地雷
TNT換算 35㎏
地雷は大きく、人に向けて使用する『対人地雷』と戦車などの車両に使用する『対戦車地雷』がある。もちろん後者の方が威力が強い。
ただ、対戦車地雷は戦車を完全に破壊するのが目的ではなく、足回り(キャタピラなど)を破壊して動けなくすることが目的なので意外と威力は高くない。
14位 ナパーム弾(Mark77)
TNT換算 250㎏
爆発の威力よりも延焼能力(周囲を燃やす能力)を高めた爆弾。中にはガソリンを主成分とした非常に燃えやすい物質が入っている。さらに、爆発で飛び散って家屋や木に張り付き、より効率よく燃え広がるようにゼリー状にして粘度を高めている。
一方、燃やすことに特化しているため、爆発の威力自体は同サイズの爆弾にしては低めになっている。
13位 トマホークミサイル
TNT換算 1.3t(1300㎏)
アメリカ軍の巡航ミサイル。開発当初は対水上用(船を攻撃する)だったため、かなり正確に爆撃をすることができる。弾頭には核兵器を搭載した核弾頭にすることもできるが、今回は通常弾頭の威力とした。
自走式でエンジンを搭載している。
最近ではシリア武装勢力の拠点をピンポイントで攻撃するために使用された。
11位 MOAB
TNT換算 11t
MOAB(正式名称:GBU-43、日本語訳:大規模爆風兵器)はアメリカ軍が開発した爆弾。全長9メートル、直径1メートル、総重量10トンの超大型爆弾であり、核兵器以外では最強クラスの威力を備えている。充てんされている爆薬の主成分はTNT火薬。1発あたり17億円程度するようで、そう頻繁には使用できない・・・のか?
ベトナム戦争で使用されたデイジーカッターの後継機とされており、非常に強い爆風で周囲の物を破壊する。さらに、衛星による誘導も可能で、高精度のピンポイント爆撃を行うことができる。
最近ではアフガニスタンで実際に使用された。この映像はネット上に公開されており、非常に高い威力を目の当たりにさせられる。
『全ての爆弾の母』という通称で呼ばれている。
10位 サーモバリック爆弾 44t
TNT換算 44t
ロシア軍が開発した爆弾。『全ての爆弾の父』という通称で呼ばれており、核兵器以外の爆弾では最も威力がある。
この爆発の威力を産みだしているのは、『気体爆薬』という新しい原理の爆薬だ。
1.固体から気体への爆発的な相変化
2.分子間の歪みによる自己分解による爆発
3.空気中の酸素との爆燃による爆発
という3段階の反応により強力な爆風を生みだす。従来の燃料気化爆薬は燃料は液体だったが、サーモバリック爆弾は固体から気体への『昇華』を用いている。昇華により爆発的な体積の増加が起こり、それに伴い爆風が生まれる。
身近なもので昇華を確認できるのはドライアイスだ。ドライアイスをペットボトルに入れるだけで強力な爆発が起こる。※危険なのでやらなにように。
9位 中性子爆弾(1トン)
TNT換算 300t
爆発自体は弱いが、多量の「中性子」が放出される。
中性子は水素原子の陽子にぶつかると、陽子を弾き飛ばし『電離』という現象を引き起こす。人体には水が多量に含まれており、水素が豊富にあるため強い影響が出てしまう。
また、中性子は透過力が非常に強く、地下鉄位なら簡単に内部まで到達してしまう。つまり、都市部で使用されたらほとんど助かる見込みは無い。
元々、中性子を放出することに重点を置いて開発されたため、爆発の威力という点ではこの順位となった。
8位 EMP爆弾
TNT換算 1.2kt(1200t)
EMP爆弾は日本語名で電磁波爆弾と呼ばれる。
原理としてはほとんど核爆弾と同じ。ただ、爆発させる高度が非常に高い。上空約30km~400kmで核爆発を起こすこし、強力な電磁波を発生させ、電子機器を破壊する。1962年にアメリカが北太平洋上空400kmで10Ktの核実験を行った際は爆心地から1300km離れたハワイで停電が起こった。もしこの実験がアメリカ本土上空で行われていたらアメリカ全土で電力の供給がストップしたとする物理学者もいる。
もし、東京上空で同様の核爆弾を使用されると沖縄を除く日本全域のインフラがストップしてしまう。このような事態になった場合、復旧に数年を要するため死傷者の数は計り知れない。
そのため、1963年には上空での核実験を禁止した部分的核実験禁止条約が締結された。
(参考) ハリファックスの爆発
TNT換算 3kt
1917年に起きた、爆発物を満載にした船舶事故。火薬による爆発としては世界最大級。1500人が即死、その後数日以内に400人が死亡、失明者も200人に及ぶ。爆心地から2kmの建物は完全に破壊され、船のいかり(重量500kg)は5km先で発見された。
この船舶の積荷はTNT227t、ピクリン酸2000t、ベンゾール200t等である。
これだけの失明者が出た理由としては、本爆発が起こる前に小規模な爆発が起こり、多数の市民が窓越しにそれを見ていたことによる。その後の本爆発で割れた窓ガラスにより失明したとされている。
7位 広島型原爆 リトルボーイ
TNT換算 15kt
人類史上初めて実戦で使用された核兵器。ウラン型原爆であり、ガンバレル方式という構造を使用している。リトルボーイに搭載されたウラン65㎏のうち、1.83%(876.3g)が核反応を起こしたとされる。
爆発した瞬間の中心温度は数百万℃、半径2㎞圏内の木造家屋は全壊。当時の人口35万人のうち、14万人が死亡したと推定されている。
6位 長崎型原爆(ファットマン)
TNT換算 23kt
人類史上2番目に実戦で使用された核兵器。プルトニウム型原爆であり、爆縮レンズ型という構造を使用している。広島に落とされたリトルボーイで用いられていたガンバレル方式よりも核分裂の効率がいいため、より強い爆発を起こすことができる。そのため、現在開発される核兵器はほとんどこちらの方式である。
長崎の人口は投下当時24万人、そのうち7.4万人が死亡した。リトルボーイよりも爆発力が強いが、死者は少ない。この要因として、長崎が山に囲まれているため、爆風や熱戦が広範囲に広がらなかったことが挙げられる。
5位 コバルト爆弾(1トン)
TNT換算 400kt
原爆や水爆をコバルト(原子番号)で覆ったもの。したがって、爆発の威力自体は他の原子力爆弾や水素爆弾と同程度ということになる。
だが、爆発時の核反応でコバルトが(Co59→Co60)と変化し、放射線を長期間まき散らす。コバルト60の半減期は約6年なので、6年間は爆心地付近には近づけなくなる。さらに風向き次第では汚染が広範囲に広がる恐れがある。撒き散らされる放射性物質の影響が非常に大きいため、実用化はされなかった。別名『汚い爆弾』。
4位 水素爆弾(B83)
TNT換算 1.2Mt(1200kt)
アメリカ軍が1983年に開発した水爆。現在グアムにあるアメリカ空軍のB-1、B-2などの爆撃機で運用されている。
原子爆弾は『核分裂』のみを使用しているが、水素爆弾は『核分裂と核融合』を用いている。ウラン型原爆でできた容器の中に重水素、三重水素が充てんされている。
爆発の原理は以下の通り。
- ウラン型原爆の容器を先に爆発させる。
- この爆発により、充てんされた水素が超高温、超高圧状態に置かれる。
- 水素が核融合を起こし、そのエネルギーを放出する。(ここまでで数ナノ秒)
水素が核融合をする反応は今も太陽で起こっている。
(参考)ツングースカ大爆発
TNT換算 7Mt
1908年にシベリアで起こった大爆発。色々な説があるが、隕石の落下が有力視されている。
隕石が大気圏に突入した際に空中で大爆発を起こし、それに伴う衝撃波が発生した。直径100kmの範囲の樹木が炎上し、2150平方㎞の樹木はなぎ倒された。1000km離れた民家の窓ガラスが割れてしまった。※ちなみに東京から福岡までの直線距離が約900km。
爆発地点では地球表面にはほとんど存在しないイリジウムが検出された。そのため隕石説が主流となった。
3位 キャッスルブラボー
TNT換算 15Mt
1954年にアメリカがビキニ環礁沖で行った核実験の名称。キャッスル作戦では全6回の核実験が行われ、それの1回目がキャッスルブラボーと呼ばれている。
原理は水素爆弾に分類されるが、超低温で液体にした重水素と三重水素を大量に使用しているため威力が向上した。しかし、水素を液化するための付属機器が非常に大きいため、総重量は73.8tにも及び、実戦で使用することが不可能。そのため、このタイプの水爆開発は中断された。
このキャッスルブラボーによる爆発で1つの島が消滅し、日本の第五福竜丸が被爆した。実際の測定上、ヒロシマ型原爆の約1000倍の威力とされる。
2位 熱核爆弾(B41)
TNT換算 25Mt
アメリカ軍が開発した中で最も威力がある核爆弾。1961年に軍に配備され、現在までに500発製造されている。
水素にリチウムを混ぜ、威力を上げることに成功した。元々、ロシアが同じ原理を使用していたが、それをアメリカが実用段階まで推し進めた。
威力は広島型原爆の1500倍以上。
1位 ツァーリ・ボンバ 50Mt
TNT換算 50Mt
旧ソ連が開発した人類史上最大の破壊兵器。ツァーリ・ボンバとは『皇帝の爆弾』という意味。
原理としては水爆に分類されており、広島型原爆の3300倍の威力であるとされている。なぜ同じ原理の水爆でここまで威力の差が出るのか。これは用いられている重水素、三重水素の量が異なるため。単純に3位のキャッスルブラボーで使用された水素の2倍を使用しているためだ。
1961年に実験で使用後、あまりにも高過ぎる威力のせいで製造中止となった。
一説には最初に開発されたツァーリ・ボンバはこれの2倍ほどの大きさで、2倍の威力があったとされている。ただ、あまりにも大き過ぎたせいで爆撃機に載せることができなかったため半分の威力に落とされた。
ちなみに、計算すると10km離れた地点の強固な家屋や鉄筋コンクリートなどの構造物が損壊する程の威力。直径20kmの巨大な更地ができ、100km圏内でも普通の家屋が倒壊してしまう。
(参考)恐竜を絶滅させた隕石 80Tt(テラトン)
TNT換算 80Tt(1T=1000G、1G=1000M、1M=1000k)
ツァーリ・ボンバの160万倍の威力と推定されている。
この一つの隕石が地球に落下したため、大量の粉じんが巻き上げられ、太陽光を遮断し氷河期が訪れたとされている。
これほどの威力の爆発があったにもかかわらず、生物は現在も繁栄しているのが不思議でならない。